研究活動
期日:2013年6月1日~4日  報告者:医員 酒井亜輝子

 過ぎし2013年6月1日より4日間にわたってスペイン、バルセロナにて開催されたEuropean Society of Anaesthesiologyのannual meeting、Euroanaesthesia2013に参加してきました。
 
 今回のEuroanaesthesia2013では長崎労災病院で研究したレボブピバカインに関する演題を発表したのですが、飛行機の日程の都合がつかず共同演者の福崎誠先生が発表に間に合わないという状況の中、1人で発表・質疑応答に挑まなければなりませんでした。たった1人での国際学会発表は初めてだったのでとても緊張したのですが、地中海のビーチのすぐそば!という明るい開放的な雰囲気の中、なごやかに発表、質疑応答を終えることができました。優しくおおらかな座長さん達と、夏休みを使って一緒に来てくれた友人に感謝したいと思います。
 国際学会発表、というとやはり英語での発表が一番の壁になるかと思うのですが、自分の英語力はさておき、国際学会に参加して英語圏のnativeの先生方の発表を拝見すると、非常にシンプルに、簡潔に発表されています。ポスターに表記していること全てを話すのではなく、あくまでも要点をしぼってプレゼンテーションし、その後のディスカッションで内容を深めるといった要領です。日本語で発表する時なども、つい多くの情報を話してしまいがちですがこのシンプルに簡潔に、という発表の仕方は今後参考にしたいと思います。
 少し話はそれますが、国際学会でのプレゼンテーションについて、私は長崎労災病院の福崎先生にこれまで御指導いただき、原稿の推敲や発音、強弱や言い回しなどは福崎先生の20年来(30年来かもしれません)の英会話の御指導者であるMike先生にも指導していただきました。そこで何度も言われたポイントは「and」や「was」などつい私たちが軽く発音してしまいがちな単語こそが、要点を伝えるためのkeywordであり、ゆっくり強調して言うべき単語だということです。全ての文章を覚えよう、つまずかないように流暢に話そう、とつい意気込んでしまうのですが、Mike先生と福崎先生に最後の最後まで注意されたのがこの単語でした。こういった単語を強調することを意識すると、自ずとメリハリのあるプレゼンテーションに近づくような気がします。

 
写真1)麻酔科医ではないものの友人が一緒に来てくれてとても心強かったです。せっかくなので友人も挿管にトライ!

 さてバルセロナ、というと未完の世界遺産、アントニオ・ガウディのサグラダファミリア贖罪聖堂があります。初めて観た時はこんな聖堂があるのかと、とてもワクワクしたことを今でも鮮明に覚えているのですが、学生の頃訪れたサグラダファミリアに、8年の時を経て澄川先生、福崎先生と共に麻酔科医として、もう一度来ることが出来るなんて思いもしませんでした。
 まだまだ未完成ではありますが、柔らかさと美しさを兼ね備えた聖堂は8年を経て更に彩りと大きさを備えていて、アントニオ・ガウディの未だ衰えない新鮮な感性とその意思を受け継いで少しずつ完成していくサグラダファミリアに初めて観た時と同じ新鮮な感動をもらいました。

 
写真2)2005年(左)と2013年(右)のサグラダファミリア。同じ角度の写真ですが随分建物が大きく増えています。

 
写真3)聖堂内部の柱は上に行くにつれ細くなり、その先には葉を讃えた森になっています。さらにまだ途中ではありますが窓には美しいステンドグラスがはめ込まれていました。   写真4)御二方もこの聖堂には大満足のご様子でした。

 そしてさらに欲張って8年前は時間の都合で諦めたFCバルセロナのスタジアムツアーにも参加しました。ちょうど運良く、ネイマール選手の入団会見も重なりバルセロナ全体がお祭り騒ぎだったのも楽しかったです。

  写真5)カンプノウスタジアム、観客席がとても近くて大迫力!
 

 そしてバルセロナ最後の夜は福崎先生待望のカタルーニャ音楽堂でのスパニッシュギターコンサートでした。宝石箱のように細かく美しい音楽堂と、どこか物悲しいスパニッシュギターの調べはまるで夢のようで、日本に帰る寂しさと共に、いつかまたここを訪れるような気がしたのも不思議な感覚です。

 

写真6)カタルーニャ音楽堂の天井。ドメニクの建築物もバルセロナの醍醐味です。

 もう少し若い頃はもっともっと新しいところを旅したい!と思っていましたが、一度訪れた土地を再訪する、という魅力が最近少しずつわかってきました。とりわけこのバルセロナには、未完の名作が待っていたのでより感慨深いものがありました。サグラダファミリア完成のニュースを一体どこでどんな風に耳にするのか、それも今の私には想像つきませんがとても楽しみです。
 一度訪れた土地を他の誰かと再訪する、または初めての土地や自分ではなかなか足が伸びない土地を訪れる、そんな楽しみが国際学会にはあります。準備はもちろん大変ですし、実際の発表の場で落ち込むことも多々あるのですが、学生の皆さんや研修医の皆さんも、機会を得たらぜひチャレンジしてみてほしいと思います。