長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野・長崎大学病院皮膚科・アレルギー科

汗の病気

無汗症について

無汗症とは

 汗が出なくなる状態の総称です。汗が出なくなると熱中症を発症したり、皮膚の乾燥や熱感、皮膚の痛みを感じることがあります。これらの症状を経験されている方はご相談ください。汗がでなくなる原因として、内分泌異常、神経の異常、脊椎の異常、ホルモン分泌異常、膠原病、アトピー性皮膚炎、コリン性蕁麻疹などの疾患が知られるほか、先天的な疾患に伴うことがあります。
The Autonomic nervous system 50(1), 67-74,2013-03-15
 また、調べても原因を特定できない無汗症があります。その場合、特発性後天性全身性無汗症の可能性があります。
 次に特発性後天性全身性無汗症の診断基準を記載します。
A: 明らかな原因なく、後天性に非髄節性の広範な無汗/減汗(発汗低下)を呈するが、発汗以外の自律神経症候および神経学的症候を認めない。
B: ヨードデンプン反応を用いたミノール法などによる温熱発汗試験で黒色に変色しない領域もしくはサーモグラフィーによる高体温領域が全身の25%以上の範囲に無汗/減汗(発汗低下)がみられる。
A+BをもってAIGAと診断する。

検査について

発汗試験:
  1. ミノール法:全身にヨウ素液とデンプンを塗り、サウナに入っていただきます。ヨウ素とデンプンは水で混ざると黒紫に染まる性質があります。汗が出ている部分は黒紫に着色されるため、汗の出ていない場所と範囲を知ることができます。
  2. 定量的軸索反射性発汗試験:皮膚に発汗刺激を行い、時間あたり何mgの汗が出るかを定量的に測定します。治療効果を見る指標にもなります。
自律神経:起立性低血圧の有無を観察します。
血液検査・画像検査:診察を行い、必要な検査を提案します。
組織検査:汗腺が障害されていないかを検査することがあります。

治療について

 病因の解明が必須ですので精査の後、背景疾患が判明した場合はそちらの治療を優先します。明らかな原因のない場合は特発性後天性全身性無汗症(AIGA)として治療します。AIGAの診療ガイドラインでは経験的にステロイド投与を勧めています。それ以外に治療方法がないためです。長崎大学皮膚科ではこれまでの治療経験を活かし、ステロイドの投与を行う前に様々な治療の効果も考慮し、症状を確認するとともに患者さんと相談をしながら治療方針を決定しています。

特発性後天性全身性無汗症の病態の解明について

 長い病名ですが、「原因不明」に全身性に生じた無汗症という意味です。言葉を変えると現時点では原因がわからない無汗症ということになります。長崎大学皮膚科では無汗症の原因を解明するために先進的な技術を用いた研究を行なっています。研究成果が適切な治療の提案につながるよう尽力してまいります。

多汗症について

多汗症とは

 汗が多くて困る症状を多汗症といいます。原因となりうる疾患(感染症、内分泌代謝異常、神経疾患など)に伴う続発性と、原因の認められない原発性に分類できます。ですから原因検査が重要です。
 原発性多汗症は過剰な発汗が明らかな原因のないまま6ヶ月以上認められ、次の6つの項目のうち、2項目以上当てはまる場合に診断されます。
 1)最初に症状がでるのが25歳以下であること
 2)対称性に発汗がみられること
 3)睡眠中は発汗が止まっていること
 4)1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
 5)家族歴がみられること
 6)それらによって日常生活に支障をきたすこと

検査について

 これまでの病歴、汗の出る範囲などを問診し、検査を検討します。
 無汗症のところで紹介した発汗検査に加え、脊椎の異常や脳梗塞の有無を検討するために画像検査を実施したり、血液検査を行います。

治療について

塩化アルミニウムローション
 汗の出口を塞ぎ、汗を止めるローションです。使用する部位を選びませんが、汗の出口を塞ぐため、行き場を失った汗が皮膚の中に漏れるなどして発赤や刺激感・痒みの生じる可能性もあります。当院では院内製剤として処方しておりますので初診日にお渡しできず、後日取りにきていただく必要があることをご了承ください。
イオントフォレーシス
 電気的に水を皮膚の中に染み込ませ、汗を止める方法です。これは電気によって水から水素イオンが発生し、その水素イオンが汗を止めるためと考えられています。定期的な受診が必要となります。
A型ボツリヌス毒素
 脇の多汗症に適用があります。他の部位には行えません。腋窩に数十カ所注射します。持続時間は約半年と言われています。
内服療法
 プロ・バンサイン®などの投薬を検討可能です。
スーパーライザー
 頸部の星状神経節に赤外線を照射します。掌蹠、頭頸部などの多汗症に実施を検討します。頻回に当てた方がよいため、来院できる方に検討いただいています。

 交換神経遮断術については当科では行なっておりませんので、ご希望のある方は実施可能な施設を紹介しております。
ページのトップへ戻る