研究活動

消化管班
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
最近では食道ESDも積極的に行われており、高度な技能により全層剥離も可能になっています。ただし、術後の狭窄が必発であり、計画的内視鏡下バルーン拡張術が必要です。将来的には再生医療の応用により合併症の軽減を目指しています。
PDT(光線力学的療法)
PDT(光線力学的療法)①
PDT(光線力学的療法)②
PDT(光線力学的療法)④

PDT は、過去に放射線治療または化学放射線治療を受けた後の局所再発(T2まで)⾷道 癌で、外科⼿術や内視鏡治療が不可能な病変が適応となる。 再発⾷道癌は進⾏が速く、適切かつ迅速にPDT 適応を判断する必要がある。低侵襲で機能 温存が可能であるPDT を最⼤限に⽣かして、できるだけ多くの患者さんを救いたい。 ※PDT をご検討されている場合、治療時期を逸しないよう、適応に迷われる状況でも結構 ですので、早めにご⼀報ください。(松島加代⼦)
消化管の炎症・発癌:microRNA (miR)による制御
microRNA(miR)とは?
microRNA(miR)とは?
microarrayによる網羅的発現解析
microarrayによる網羅的発現解析
H.pylori 感染胃炎におけるクラスター解析
H.pylori 感染胃炎におけるクラスター解析
食道扁平上皮癌特異的miR-205を同定 *
食道扁平上皮癌特異的miR-205を同定 *
*消化器がんプロジェクト会議研究助成 (原研細胞との共同研究)
microRNA(miR)は22塩基前後のsmall RNAで、蛋白質の翻訳を抑制する機能があります。発癌に関わるmiRは"onco-miR"とも呼ばれます。消化管グループでは食道扁平上皮癌に特異的なmiRとしてmiR-205を同定し、その機能解析を行っています。また、胃癌の原因であるピロリ菌の感染胃粘膜ではmiR発現プロフィールに特性がみられることを発見しました。ピロリ菌関連疾患の病態、特に胃発癌との関与が予想され、興味深い結果が得られそうです。
消化管の炎症・発癌:epigenetics機構の解明
胆管癌ではIL6-JAK/STAT3 pathwayが亢進 *
胆管癌ではIL6-JAK/STAT3 pathwayが亢進 *
胆管癌ではSOCS3 epigenetic silencingが頻発 **
胆管癌ではSOCS3 epigenetic silencingが頻発 **

SOCS3 promoter領域のbisulfite sequencing
Epigenetic regulation of miR expression?
Epigenetic regulation of miR expression?
Epigenetic regulation of miR expression?
Epigenetic regulation of miR expression?
*Hepatology 2005; 42: 1329-38
**Gastroenterology 2007; 132: 384-96
近年遺伝子配列の変化を伴わない遺伝子発現の異常=epigeneticsが発癌や癌の悪性度と関与することが明らかになっています。胆管癌ではIL6/JAK/STAT3の亢進がみられますが、この一因として、負の制御因子SOCS3遺伝子のプロモーター領域にDNAメチル化が頻発し、発現抑止が起こってることを見出しました。miR発現の一部がDNAメチル化により発現制御されている可能性があり、そのメカニズムや機能解析にも興味を持って取り組んでいます。
クローン病のパイエル板微細構造解析と応用
クローン病におけるパイエル板の拡大内視鏡観察 *
クローン病におけるパイエル板の拡大内視鏡観察 *
クローン病におけるパイエル板の電子顕微鏡 **
 クローン病におけるパイエル板の電子顕微鏡 **
Eパイエル板部の腸内細菌叢のT-RFLP解析 ***
Eパイエル板部の腸内細菌叢のT-RFLP解析 ***
腸上皮細胞間接着能とmiR-200 family
腸上皮細胞間接着能とmiR-200 family
Gut 2007; 56: 894-5
**内視鏡医学研究振興財団研究助成
***ダノン健康・栄養普及協会学術研究助成
クローン病は回腸末端に好発する原因不明の炎症性腸疾患です。回腸末端にある最大の腸管関連リンパ組織であるパイエル板に注目し、拡大内視鏡による微細構造を解析しています。クローン病ではパイエル板の表面構造異常が明らかで、走査電顕でM細胞や吸収上皮に不整がみられました。さらに、分子生物学的手法により腸内細菌フローラの網羅的解析を行っており、新たな視点からクローン病の原因究明を目指しています。miR-200 familyは細胞間接着因子のE-cadherinを制御しており、炎症性腸疾患の透過性を正常化する新規治療法に繋がる可能性もあります。上皮間葉転換(EMT)は粘膜障害の修復・再生にも関わる重要なテーマと考えています。
喫煙者における 禁煙後胃排出能変化の解析
禁煙後の体重、BMI、食欲の変化
禁煙後の体重、BMI、食欲の変化
禁煙後の胃排出能の変化
禁煙後の胃排出能の変化
禁煙後に食欲が亢進したり、体重が増加することが知られています。
総合診療科と共同で、禁煙を希望された喫煙者の胃排出能を13Cを用いた呼気試験で測定しました。胃排出能は禁煙直後に著明に亢進することがわかりました。禁煙直後の胃排出能の亢進が、禁煙後の体重増加に関わっている可能性が示されました。
これからも身近な疑問に科学で答えていきます。
肝細胞癌におけるアポトーシスシグナル伝達の機序
Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)は、細胞幕にあるレセプター(Death receptor 5, DR5)に結合して癌細胞にアポトーシスを起こしますが、正常の細胞に対しては毒性を持たないため、抗癌剤としての効果が期待されています。これまでの肝細胞株を用いた研究で、TRAILによるアポトーシスには、TRAILに結合したDR5の、細胞膜から細胞質内への移動 (internalization)が必要であることが、分かりました。また、internalizationを起こしたDR5が、その後リソソームに融合することによってリソソームの融解を引き起こし、アポトーシスに寄与していることが解明されました。
今後は、同じくinternalizationを得て細胞内に取り込まれる、ヘリコバクターピロリ菌の毒素であるVac A がアポトーシスを起こす機序についても研究を進める予定です。

肝細胞癌株をTRAILで刺激するとTRAIL(緑)は細胞室内へInternalizationを起こす
K44A Dynaminを用いてTRAILのinternalizationを 阻害すると、アポトーシスが抑制される
K44A Dynaminを用いてTRAILのinternalizationを阻害すると、 アポトーシスが抑制される
TRAIL刺激後のDR5 (緑)とリソソーム(赤)の癒合
TRAIL刺激後のDR5 (緑)とリソソーム(赤)の癒合TRAIL刺激後のDR5 (緑)とリソソーム(赤)の癒合
TRAILによるアポトーシスの機序
TRAILによるアポトーシスの機序