学生・研修医の皆さんへ

佐世保市立総合病院
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当院における胆道、膵、十二指腸乳頭部領域疾患に対する診断と治療
(長崎県北地区および県内での当院の役割)

佐世保市立総合病院

  当院は長崎県北地区の中核病院として年間を通して多くの外来、入院患者を有し検査、診断、治療を行なっています。消化器疾患患者も多く、救急搬送来院や紹介患者に対する検査、診断、治療を連日行なっています。
 近年、膵、胆道、十二指腸乳頭部領域疾患も増加しており県内でも有数の検査・治療数、治療成績を誇っています。
 当領域のなかでも特殊な診断と治療手技を要する十二指腸乳頭部病変の診断・内視鏡治療や、診断に難渋する微小膵・胆道腫瘍の診断、最近増加傾向にある膵嚢胞性腫瘍の診断にも積極的に取り組んでいます。



  A) 膵・胆道・十二指腸乳頭部領域の特殊検査
   (H20年度 年間検査数)
    1) EUS(超音波内視鏡検査):94例
    2) ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査):265例
    3) IDUS(管腔内超音波検査):34例


  B) 膵・胆道・十二指腸乳頭部領域の内視鏡治療査
   (H20年度 年間治療検査数)
   ☆1) 内視鏡的十二指腸乳頭部切除術:6例
     (乳頭部腫瘍切除総数 41例 / 7年間)
    2) 総胆管結石採石術(乳頭切開術:EST):72例
    3) 胆管、膵管ステント留置:57例


 上記検査、治療のなかでも内視鏡的乳頭部切除術に関しては、病変の進展度診断、治療手技の特殊性、合併症対策(膵炎、胆管炎予防のため治療直後に膵、胆管ステント留置を要すること)が必要なことなどから、本県内に診断、治療の施行可能な施設は当院以外にないのが現状です。乳頭部腫瘍の治療はこれまで浸襲の大きな外科的治療が行われてきましたが、近年診断および内視鏡技術の向上により内視鏡的切除術が可能となっています。しかし進展度診断(EUS、IDUS)にて消化管内のみでなく膵管、胆管内進展の有無などの正確な進展度の評価を行なう必要があり、これにより治療適応の有無が決定されるため、本邦でも診断、治療の可能な施設は限られています。過去7年間に当科で行った内視鏡的乳頭部切除術の総数41例は、長崎県内の治療総数(本邦では名古屋大学に次いで2番目に多い症例数)です。治療成績も良好であり、当治療で最も問題となる急性膵炎、胆管炎、穿孔、出血などの重篤な合併症も現在まで認めておらず、安全に、低浸襲な治療を行うことが可能です。
 その他に膵嚢胞性腫瘍の治療方針決定のための診断や予後不良といわれる膵・胆道癌に対して正確な診断と治療方針の決定のためにEUS、IDUSを用いて正確な評価を行っています。胆管結石に対する内視鏡的採石術や手術不能進行癌に対するドレナージ術、難治性膵炎、仮性嚢胞に対する超音波内視鏡穿刺ドレナージや膵管ステント留置術なども積極的に行なっています。県内外の関連病院より、診断・治療困難例の再精査・治療依頼の紹介例が増加しており、積極的に取り組んでいます。

■ 地域医療に対する当院、当科の役割
  学会活動(総会:シンポジウム、地方会、教育講演、膵・胆道領域の診断・治療のトレーニングの工夫などを発表)を積極的に行い、消化器内視鏡医を目指そうとする若い先生方や現在診療にたずさわっている消化器内視鏡医の先生方の膵・胆道領域診断、治療の手技がさらに向上できるようサポートすることに努め、また全国から九州、長崎県内の消化器内科の先生方との交流をもち胆道、膵、乳頭部領域の診断、治療法についての報告、ディスカッションなどを介して当領域の診断、治療成績のさらなる向上を目指しています。
 県内、外の医療施設にて発見された乳頭部腫瘍の診断、治療をはじめ、膵・胆道・乳頭部領域疾患における診断困難例、治療困難例、難治例の紹介をうけることが増加しており、ご紹介元の先生方へは診断、治療後に正確な診断、治療情報の提供、転院後の経過観察の再依頼などを行うことで、今後の本県ならびに九州全域を含めた広い範囲でのチーム医療が可能となりつつあると考えています。