研究内容
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 ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ウシ海綿状脳症(BSE)をはじめとするプリオン病は、感染性蛋白粒子(プリオン)がその病原因子と想定されていますが、未解明な点が多く残されている分野です。プリオンは、構造変換し凝集するというアミロイド性タンパク質としての挙動と、個体から個体へと伝搬するというウイルス様の感染動態と2面性を備えており、したがって構造生物学的アプローチと病原微生物学的アプローチを駆使してプリオンの本質に迫りたいと考えて研究に取り組んでいます。プリオンをとことん追求することが新たな病原微生物学の世界を切り開く糸口になると考えています。また異常蛋白蓄積による神経変性メカニズム解明も重要テーマです。
 当教室では、先代の故宮本勉教授の時代から日本におけるプリオン研究の草分け的存在としてプリオン研究をはじめ実績を積み重ね、現在片峰茂教授の指導の元、病原体の本質を解明することを第一目標に掲げ、培養細胞、遺伝子改変マウス等用いて基礎的研究を行いつつ、診断法、治療法開発まで幅広くチャレンジしているラボです。文部科学省科学研究費、厚生労働省科学研究費、農林水産省委託研究費など政府系競争的研究資金獲得にも実績があり、そしてその研究成果は国内外に知られ高い評価を得ています。プリオン研究においてノーベル賞を受賞したガジュセック博士、プルシナー博士の両名をはじめ著名な海外の研究者を招聘し講演してもらっています。また臨床に直結する早期診断法、根治療法、予防法の開発など重要課題に関しては神経内科、薬学部ほか学内外と共同研究を行っています。

具体的研究内容
   代表的発表論文として挙げているように、1996年にはプリオン蛋白遺伝子欠損マウスにおける神経細胞死を世界で初めてNature誌に報告。その後、その細胞死にはプリオン蛋白遺伝子下流に存在するプリオン蛋白類似蛋白(ドッペル)が関与しておりノックアウトマウスでは異所性発現が起こっていることを明らかにした。プリオン蛋白が発現せず代わりにドッペルが発現すると神経に致死性のシグナルが入ると考えられ、共通の結合蛋白が想定されているが、その細胞死の分子メカニズムはまだ不明で我々の重要研究テーマの一つである。このほかに、プリオンにおける株多様性メカニズムと細胞指向性、株間のウイルス様干渉現象、プリオンに対する免疫反応などプリオン仮説では説明が難しいとされる現象の解明を行っている(Science 2005など)。福岡伸一氏の著書「プリオン説はほんとうか」ブルーバックス講談社には、当教室の実験データが多く取り上げられ、プリオン仮説に疑問を投げかける重要証拠として説明されている。確かに我々はいまだ真の病原体がウイルスとして存在する可能性を追いかけているプリオン研究業界では絶滅危惧種であるのかもしれない。病原体の本体はさておいてもプリオン蛋白異常化が発症に密接に関与することは間違いないため、最近ではプリオン病治療薬の開発を岐阜大学と共同で進め、新規化合物を発見した(PNAS 2007)。また試験管内の異常プリオン蛋白増幅系の開発、診断への応用を進めている。ワクチン開発もテーマの一つ。さらに神経再生医療をプリオン病治療に応用することも試みている。将来的にはプリオン蛋白以外のアミロイド性蛋白の解析にも研究を広げていきたい。20年度からは薬理学の上園准教授がラボに加わり、プリオン蛋白の生理機能に関して新たな研究展開も計画されている。

教室の歴史 (一部だけ紹介)
   ヒトのプリオン病には家族性プリオン病があり、その代表はGerstmann-Straussler Scheinker 病(GSS)といわれる小脳変性を主体とする疾患群である。その患者脳をマウスに脳内接種したところ長い潜伏期ののち発症した(当時九州大学脳神経研、立石潤先生の業績)。そのマウス順化GSS病原体をFukuoka-1株という。1979年当時世界初のヒト由来マウスプリオン株樹立であった。当教室はもともとレトロウイルスを主に研究していた研究室であったが宮本教授はそのFukuoka-1株を譲り受け、ウイルス学的な基礎研究をこつこつと始めた。免疫学的なテストや同居によるマウス間の伝搬の有無を検証したりしていた。その頃(1980年代前半)アメリカのプルシナーらはスクレーピー感染ハムスター脳から濃縮された感染性分画にプリオン蛋白を発見。世界中のプリオン病研究がプリオン蛋白研究へと集中していく第3期がスタートしたところであった。蛋白発見から間もなく遺伝子がクローニングされ遺伝子欠損マウスの作成は当時世界的な競争になった。当時大学院生の坂口末廣先生(現徳島大学教授)がノックアウトマウス作成に挑戦し、競争には敗れたが、後に神経細胞死が起こっていることを報告しプリオン研究教室として世界的に認知されるに至った。折しもイギリスではBSEがヒトに感染したと思われると政府が正式に認め世界中のマスコミが注目し、我々の教室もマスコミの取材を連日受けた。2001年9月10日に国内初のBSE感染牛が確認されてから、農水省、厚労省がプリオン関連研究に大型予算を獲得、我々の教室も日本のプリオン基礎研究の草分けとして国家プロジェクトに参入して現在に至る。 
 
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