理研 有賀純チーム(比較神経発生/行動発達障害研究チーム 2004-2013)の研究紹介

 
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研究概要 

脳と遺伝子情報

私たちは脳がどのようにして形成されるのかを理解しようとしています。基本的な脳のつくりかた (発生プログラム)は遺伝子の情報の中に書き込まれているはずですが、それがどのようなものなのかについては現在のところ、一部分しかわかっていません。昨今のゲノム解読プロジェクトの進展は、私たちに莫大な遺伝子塩基配列情報をもたらしてくれましたが、これを脳の研究にどう生かしていくかということはこれからの脳神経科学の研究者に与えられた課題の一つです。


さまざまな脳

脳を持つのはヒトだけではありません。神経管の前方の三つのふくらみからできてくる狭い意味での脳は鳥類、両生類、爬虫類、魚類を含む脊椎動物すべてが持っています。また、脳は神経組織の一つですが、神経組織は多くの無脊椎動物にも存在します。これらの動物での神経組織はクラゲのように、散在型のものから、イカのようにある程度の集中化が進んだものまでさまざまです。それぞれの動物が体のつくりや生活環境に応じた神経組織を持っています。


比較ゲノム

私たちは比較ゲノムを利用して、脳の発生発達に関する研究を進めています。ゲノムプロジェクトの進展により、様々な生物種間での遺伝子塩基配列情報の比較解析が容易に行えるようになりました。保存されている配列の中には、遺伝子産物である蛋白質をコードしている領域や、遺伝子が特定の場所で特定の時期に発現できるように遺伝子発現を制御している領域があり、生命活動に重要なものが含まれています。特に神経組織の発生を調節している遺伝子について、その構造、発現、機能を比較解析することで神経組織の成り立ち、多様化、脳の形成に関わる遺伝子情報を整理することができます。


研究室名「行動発達障害研究チーム」

研究室開始から5年近くが経過しました。2007年の研究室レビューでは評価委員会のメンバーから非常に高い評価を受けることができ、第二期目に入ろうとしています。これまでに比較ゲノム解析を利用して、脳の発生発達に重要な遺伝子を見いだし、それらの遺伝子機能を欠くモデル動物が多数作製されています。これらの動物の多くは脳の発生過程もしくは脳の高次機能に異常を示しており、ヒトの神経発達障害や精神神経疾患の病態の理解にも役立ちます。現在、多くの研究室メンバーはモデル動物の行動解析に集中して取り組んでいます。そこで、2008年度から、研究室名を「比較神経発生研究チーム」から「行動発達障害研究チーム」に変更しました。これまでの研究の流れを大切にし、更に発展させていきます。


 



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