学生・研修医の皆さんへ

研究について
「医工の絆」ハイブリッド医療人養成コース ~出島マインドで医療ものづくり~
「医工の絆」ハイブリッド医療人養成コース ~出島マインドで医療ものづくり~ 「ハイブリッド医療人」とは医学部、工学部両方の知識を持ち医療機器創出のあらゆる段階で主導的な役割ができる人材です。
 このハイブリッド医療人養成コースは永安 武教授が主催する我々腫瘍外科学教室が中心となって計画し、平成25年度文部科学省未来医療研究人材養成拠点形成事業(A)に高い評価で採択されました。このコースは、医歯薬学総合研究科教員と工学研究科教員の密接な協調関係を基盤に提案されたものです。
 この「ハイブリッド医療人養成センター」は、事業全体の円滑な管理・運営を図ることを目的として、長崎大学病院本館11階オープンラボに平成25年10月1日付けで開設されました。

コースの特徴
医工の連携を学びながら革新的な医療機器の開発を実現可能!
最新の3Dプリンターによる医療機器の設計、成形が可能!
3Dプリンターによる設計⇒成形⇒動物実験⇒臨床試験までを一貫して実施可能!
工学部出身者が医学博士号を取得可能!
工学部教員、医学部教員の相互乗り入れ教育で、工学部出身者は医学の知識、実習を体験、医学部出身者は工学の知識、実習を体験可能!
奨学金など、学費を補助する制度!
オランダ ライデン大学やデルフト工科大学などに留学可能!
特許の取得

http://www.mdp.nagasaki-u.ac.jp/hybrid/New Window
ハイブリッド医療人養成コースの現況
平成20年卒 小畑智裕
 本プロジェクトは平成25年度文部科学省未来医療研究人材養成拠点形成事業に採択されたことから開始されました。本プロジェクトの趣旨は、医工連携を発展させることができるような思想、考えを持った人間を養成することにあり、医学系・工学系の学部学生から大学院まで若い時期から、他学部と共同し、幅広い人材を育成しています。特に大学院教育に関しては、実際に様々なアイディアを具体化することに重点を置いています。
 プロジェクトの一環として平成25年には高性能3Dプリンター、平成26年度には、バイオ3Dプリンターを導入し、最先端技術を取り込みつつ、それを応用したものづくりに取り組んでいます。
 高性能3Dプリンターの導入により、患者CTから臓器モデルを作成することができるようになりました。学生教育や患者説明に使用するだけでなく、手術のシミュレーションを「実際の症例」で施行することにより、いわゆる個別化医療の先駆けを実践できるようになりました。また、「こんなデバイスあったらいいな」というコンセプトのもと、工学部と協力し、手術用鉤や鏡視下手術用鉗子を試作し、手術に役立つ画期的なデバイスを作成しています。特に硬性鏡の洗浄システムは、助成金を獲得し、企業とのコラボレーションも進めることができたため、最終的には特許も取得することができています。他にも、各ハイブリットメンバーの研究テーマは実用に即した、製品化が期待されるものが多くあります。
 さらに、初年度に導入したバイオ3Dプリンターを使用した臓器作成も進めております。様々な分野で、この装置を使用した研究成果が報告されており、再生医療の分野でもトップクラスの成果が生まれています。当科では気管や食道等の管腔臓器から作成を行っており。徐々にではありますが、学会発表、論文掲載、特許取得等といった形で結果報告でき始めています。広い範囲へ応用できる研究ですので、今後次々と実績を作っていけるものと確信しています。
 開始から5年経過した本プロジェクトですが、これまでに医学系、工学系合わせて、19名の学生が入学し、5名の卒業生を輩出することができています。現在は13名で研究開発を行っており、活気に満ちた活動を行うことができています。
 実績としましては、これまでに国内学会発表 52回、海外発表 10回 英文論文 11編、実用新案取得 1件を達成しており、今後も引き続き国内外に発信していきたいと考えています。
 オランダ留学に関しても、平成27年より毎年数名、オランダのライデン大学、デルフト工科大学、ポルトガルのポルト大学に短期留学しており、異文化に触れるとともに、医工連携先進国の取り組みを見学、体験し新たな開発への活力を得ることができています。この連携が縁で新たなライデン大学とのプロジェクトも、この度開始されました。本プロジェクトは日本国内にとどまらず、オランダを皮切りにグローバルに展開しつつあります。
 大企業が全力を挙げて開発に取り組んでいる医療機器開発の分野は、非常に競争が厳しい分野です。しかし、大企業ですら主力となるような製品を生み出すことは難しく、山のようなアイディア、試作品が生まれては消えていくのが現状です。確実な、約束された成果などなにもない開発の現場ですが、国から多大な支援を得ている又とない環境ですので、何か形に残るものを作りたいと懸命に取り組んできました。その結果、我々の開発した鮫肌鉗子や内視鏡洗浄装置は、特許取得ができ、臨床の現場で実用できる段階まで進むことができています。こうした工学部を始め、多くの企業との連携が実を結んだ結果を、実際に自ら商品を使用するというることで実感できるのは、このプロジェクトに携わる上でしか味わうことのできない喜びです。今後も、他業種、学部間でより連携を深めるとともに、毎年新たに加わってくるメンバーと共に、新たな開発の喜びを感じることのできる場にしていきたいと考えております。
ハイブリッド医療人養成コース・スタッフ