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長崎大学医学部 法医学教室では、警察などの司法機関からの嘱託による法医解剖(司法解剖ならびに承諾解剖)を行っています。これらの解剖は死体解剖保存法ならびに刑事訴訟法など、定められた法令に基づいて行われるものです。
通常、司法関係者による検視、医師による検案が行われ(医療機関に入院中に亡くなられた場合には検案が行われないこともあります)、その後に解剖が行われます。
法医解剖では必ず頭部・胸腹部の検査をします。場合によっては、コンピューター断層撮影(CT)を解剖前に行い、診断の補助にしています。通常の検査はこれで終了しますが、交通ひき逃げ事故など、特殊な場合には背面や四肢などの解剖も行われることがあります。
解剖時間は普通大凡2~3時間位(解剖前の準備時間、解剖後の司法関係者への説明時間のため更に1時間ほど必要です)ですが、場合によっては4~5時間ないしそれ以上の時間を要することもあります。
解剖には肉眼的な観察のほか、いろいろな臓器のごく一部から病理組織標本をつくり、顕微鏡で病的な異常の有無を観察する検査(病理組織学的検査)、血液から血液型を判定する検査(血液型検査)、血液・尿から薬物を分析する検査(薬物検査)、血液や尿から死亡前の生化学的異常の有無を調べる検査(生化学的検査)、組織から身元確認のためのDNA型を判定する検査(DNA多型検査)、などが含まれます。もちろん常に全てが行われるわけではなく、またご遺体によっては行えない検査もあります。
法医解剖の場合はさまざまな事件に関係している事例が少なくありません。従って、診断の確実性の保持などの理由により、試料の保存を行っています。臓器はパラフィンブロック(臓器の小片をパラフィン[ろうの様な物質です]内で固定したもの)ならびにプレパラート(パラフィンブロックをミクロン単位で薄くスライスし、ガラスに載せて顕微鏡観察できるようにしたもの)として保存(いずれも10~20個[枚]程度)、血液は試験管に凍結保存(1~2本程度)します。ただし亡くなられた後のご遺体の変化によって検査が行えない場合は保存しません。 |
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