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山口大学
藤宮 龍也 |
法医学の魅力はプロフェッションとしての喜びである。現代の検死・司法制度の中でその力を発揮して死因や死亡状況を推定し、それが報われた時に喜びを感じる。遺族・関係者や被害者の心のケアや社会安全の向上に役立つ仕事であり、やりがいのある専門職である。ところが、法医学を専門としていると「推理小説が好きですか?」とか、警察・探偵オタクかのように見られたり、「どうして、臨床医にならないの?」とかいった偏見や誤解をもたれたりする。是非、このワークショップで偏見や誤解を払拭してもらいたい。
法学からみた場合、法的行為・判断を行う上での医学的裏付けとして法医学がある。検視官・交通指導課・科学捜査研究所・海上保安庁・その他の行政職とともに法科学を担っているが、日本の検死制度は戦前のものに継ぎ接ぎした状態で、不備が多い。にもかかわらず、「死」を忌み嫌う風潮の中でほとんど議論さえ避けられ、現在に至っている。私は英米系の検死制度を研究しているが、社会安全へ向けて国際連携が行われつつある時代に、日本は大きく立ち後れている。若い学生の今後の活躍を期待したい。次に、検事・弁護士などの法曹界と真実追究のために協力したり、戦ったりもしている。法曹関係者と医師とでは理系と文系とのように性格が大きく異なる。真実に対する見方も大きく異なるとさえ感じられることがある。地道に科学的真実を社会に伝えていくことが法医学の役割とも言える。裁判員制度が始まってからは、裁判員として参加する市民への配慮も必要とされ、法医学の役割はますます重要になってきている。
山口大学では高度学術医養成コースを作り、研究マインドの養成に力を入れている。その中で法医学に興味を持ってもらえる学生が増えることを期待するのが山口大の戦略である。これについて簡単に紹介し、学生諸君の研究マインドを刺激したい。 |
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