研究内容

4.皮膚瘢痕形成の分子メカニズムの解明
 通常、皮膚創傷治癒後に瘢痕(傷跡)が残ります。しかし、胎生期における皮膚創傷部位は、瘢痕が形成されず皮膚組織が完全に再生することが知られています。その際、創傷部位に炎症細胞が認められないことから、炎症細胞が瘢痕形成に深く関与していると考えられていますが、その分子メカニズムは未だ解明されていません。私達は、炎症反応が惹起しない PU.1 KO マウスや次世代シークエンサーなどを用いて、炎症反応・瘢痕形成に関与する既存遺伝子およびmiRNA を包括的同定してきました。最近は、miR-142 が黄色ブドウ球菌感染創において必須であることを解明しました(Tanaka K et al, J Invest Dermatol, 2017)。

 瘢痕形成の機序は、基本的な臓器線維化の増悪機構と類似しています。また、瘢痕形成の治療には、核酸医薬が有効です(Mori R et al, J Exp Med, 2008)。本研究から得られた結果を基盤として、他臓器における線維化機構の解明や核酸医薬の開発に取り組んでいます。


皮膚創部に集積する好中球の生体イメージング。蛍光強度の違いにより、生きたまま好中球数だけでなく好中球の位置情報が明らかとなる。 WT マウスの好中球遊走の様子 miR-142 KO マウスの好中球遊走の様子
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EGFP を発現する WT マウスの好中球遊走の様子 EGFP を発現する miR-142 KO マウスの好中球遊走の様子 EGFP を追跡することにより、好中球の軌道、移動距離、速度が明らかとなる。
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