腎臓の働きと腎不全
腎臓の働き
腎臓の機能はひと言で表現すれば「体内の恒常性を維持する」ということです。具体的には以下の5つです。
- 体の水分量を調節する
- 体の毒素を体外に排泄する
- 貧血を予防するホルモンを分泌する
- 血圧を調節するホルモンを分泌する
- カルシウムやリンを調節するホルモンを分泌する
慢性腎臓病・末期腎不全とは
慢性腎臓病とは
腎臓の障害(蛋白尿および腎形態異常)または腎機能低下(糸球体濾過量 60ml/min/1.73㎡未満)が3か月以上持続している状態を慢性腎臓病とよびます。大きくはステージが1~5の5段階に分類されます。わが国において全ステージの慢性腎臓病患者さんは約1300万人存在するといわれ、80歳台では2人に1人が慢性腎臓病患者であり、年齢が上昇するにつれ罹患率が高くなります。今や慢性腎臓病は国民病ともいわれています。
慢性腎臓病が進行すると
正常な尿の排泄ができない、あるいはホルモン産生の低下などにより以下のような症状や病態を生じます。
- 尿毒症症状(老廃物の蓄積による吐気・めまい・食欲低下・全身倦怠感など)
- 水分の貯留(尿量低下によるむくみ・血圧上昇・心不全・肺水腫による呼吸困難)
- 電解質異常・酸塩基の異常(高カリウム血症による致死性不整脈など)
- ホルモンの産生低下や異常による貧血・骨の形成異常・血圧の異常
その他にも関連するいろいろな症状や病態を呈してきます。
腎不全が進行し、治療せず放置すると生命の維持も困難となります。このような状況を末期腎不全とよびます。末期腎不全に至ると、透析療法あるいは腎移植といった腎臓の代わりをする治療(腎代替療法)が必要となります。
慢性腎臓病あるいは末期腎不全の診断は、主に血液検査、尿検査、画像検査などにより行われます。その診断は、症状がある場合と無症状で発見される場合があります。
また必要性と状態に応じて、慢性腎臓病の原因を特定するために腎生検という病理組織検査が実施される場合がります。
診断の際に行われる検査やその内容
1. 問診
腎機能障害に関連する症状の有無や、腎機能障害の誘因の有無などを調べます。必要に応じて、誘因や原因疾患の治療を優先することがあります。
2. 血液検査
血清クレアチニン値、血清尿素窒素のレベルにより、重症度や治療の緊急度を評価します。
3. 尿検査
血尿や蛋白尿の有無を調べます。血尿の有無あるいは蛋白尿の程度は腎機能障害の原因や程度を把握するのに有用です。
(注)血清クレアチニンから推定されるeGFRと蛋白尿の程度から腎機能障害の程度を分類して(慢性腎臓病におけるCKDステージ分類)、治療方針が検討されます。
原疾患 | 蛋白尿区分 | A1 | A2 | A3 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
糖尿病性腎臓病 |
尿アルブミン定量 尿アルブミン/Cr比 |
正常 | 微量アルブミン尿 | 顕性アルブミン尿 | ||
30未満 | 30~299 | 300以上 | ||||
高血圧性腎硬化症 腎炎 多発性嚢胞腎 移植腎 不明 その他 |
尿蛋白定量 尿蛋白/Cr比 |
正常 | 軽度蛋白尿 | 高度蛋白尿 | ||
0.15未満 | 0.15~0.49 | 0.50以上 | ||||
GFR区分 (mL/分/ 1.73m2) |
G1 | 正常または高値 | ≧90 | |||
G2 | 正常または軽度低下 | 60~89 | ||||
G3a | 軽度~中等度低下 | 45~59 | ||||
G3b | 中等度~高度低下 | 30~44 | ||||
G4 | 高度低下 | 15~29 | ||||
G5 | 高度低下~末期腎不全 | <15 |
重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。
CKDの重症度は死亡、末期腎不全、CVD死亡発症のリスクを緑のステージを基準に、黄、オレンジ、赤の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。
(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)
4. 画像検査
超音波検査(エコー検査)やCT検査により、腎機能障害の程度や原因を調べます。
腎臓が萎縮してないか、尿の停滞や通過障害がないかなどの評価を行います。腫瘍や結石などのよる通過障害が原因となることがあります。
5. 腎生検(腎組織採取)
最終的に確定診断を行うあるいは治療方針を決定する時に行われることがあります。ただし、体に負担がある検査ですので、検査を行うかどうかの適応については専門医の判断が必要です。
末期腎不全に至ると、全身状態の改善や命を守るために、透析療法または腎移植が必要となります。
透析療法
透析療法には血液透析と腹膜透析があります。
血液透析は体内から血液を取り出し、血液から不必要な老廃物と水分を除去し(血液を浄化して)体内に戻す治療です。通常は週3~4回の透析病院への通院治療が必要となります。近年では施設により夜間透析、在宅透析を取り入れている場合があります。
腹膜透析はお腹の中(腹腔と呼ばれています)にカテーテルという特殊な管を挿入して、その管を使用して透析液を出し入れすることにより、不必要な老廃物と水分を除去します。
透析療法では体液バランスの調整および老廃物の処理は可能ですが、それでも十分とは言えません。また腎臓の産生するホルモン(造血や骨の代謝に関係するホルモンなど)は補充できません。