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免疫抑制薬について

移植を受けた人の身体に生まれながらに備わっている免疫力により、移植された臓器を異物と認識して、破壊しようとする反応が起こります。この反応を拒絶反応といいます。この拒絶反応の発症を抑える薬が免疫抑制薬です。

拒絶反応の種類

拒絶反応により移植した腎臓に障害が起こります。症状としては発熱、倦怠感、腹膜の刺激や創部への痛みがみられます。これらの症状を認めないにもかかわらず、移植腎生検で顕微鏡的に診断されることもよくあります。免疫抑制薬を投与しないと、1週間くらいの間に移植された臓器は破壊されてしまいます。
拒絶反応の強さは、ドナーとレシピエントの組織適合抗原の差に関係していますが、個人差もありますので、免疫抑制療法の内容は患者さんごとに多少異なります。最初は4~5種類の薬剤を組み合わせて強力に行います。体がもつ免疫力を強く抑えるため、特に移植後6~12か月は感染症等の発症リスクが上昇します。
全身状態や腎機能が安定すると、薬剤の種類を減らし、それぞれの薬剤は時間をかけて減量していきます。しかし、拒絶反応の徴候が見られたら、薬を追加、変更したり、また投与量を増やしたりします。退院後は免疫抑制薬をきちんと決められた指示通りに服用し感染予防を日頃から行えば、普通の生活が送れるようになります。そして移植から時間が経つにつれて薬の量も減っていくため、薬の副作用や感染症の心配は少なくなっていきます。

主な免疫抑制薬

移植後、免疫抑制薬はタクロリムスかシクロスポリンのどちらかを内服します。
その他2~3種類の免疫抑制薬を組み合わせて用います。

タクロリムス(商品名:プログラフ®・グラセプター®

プログラフ®(1日2回)

グラセプター®(1日1回)

副作用

腎機能障害(尿が少なくなる・顔、手、足がむくむ・腎不全)、神経学的症状(頭痛・手がふるえる・しびれ・けいれん・睡眠障害)、高血圧、糖尿病、胃腸障害(吐き気・嘔吐・食欲不振・下痢)、高カリウム血症、低マグネシウム血症、リンパ節の腫大

シクロスポリン(商品名:ネオーラル®

副作用

腎機能障害(尿が少なくなる・顔や手足がむくむ・腎不全)、神経障害(手の震え・しびれ・けいれん)、頭痛、高血圧、急性膵炎、多毛、歯肉の腫れ、高カリウム血症、リンパ節の腫大

ミコフェノール酸モフェチル(商品名:セルセプト®

副作用

骨髄抑制(感染症にかかる危険性の増大・貧血・出血)、消化管症状(下痢・吐き気・嘔吐)

エベロリムス(商品名:サーティカン®

副作用

創傷治癒の遅延、脂質異常症、糖尿病(高血糖)、血球減少、下腿浮腫、口内炎、蛋白尿

プレドニゾロン(商品名:プレドニン®

副作用

食欲増加による体重増加、胃の不快感、胸焼け(消化性潰瘍)、ニキビ、顔・手足のむくみ(満月様顔貌)、視力の減退、多毛、気分のムラ、イライラ又は不眠、高血圧、傷の治りが悪い、日光過敏、骨粗鬆症、骨頭壊死

IL-2レセプター抗体(バシリキシマブ・商品名:シムレクト®

手術直後と手術後4日目の2回、点滴で投与し、移植直後に強力に免疫を抑制し、拒絶反応を防ぎます。

他にも、イムラン®、ブレディニン®などの免疫抑制薬があり、必要に応じて変更しながら使用します。