ごあいさつ
 
緒 言  
 
 
長崎大学医学部附属病院小児科長・教授 森内浩幸
(平成14年7月12日)

 ヒトは胎児期、新生児期、乳児期、幼児期、学童期、そして思春期と目まぐるしい成長発達を遂げ、成人期を迎えます。そしてこの間、加齢とともに様々 な生理学的そして病理学的変化を受けていきます。私達小児科医が診るのは病気そのものではなく病気をもったこども達です。私達は成長や加齢に応じて刻々と 変わっていく生理学的そして病理学的背景をしっかりと考えながら、こども達を診ていかなければなりません。

 小児科は小児の内科的疾患の全てを診ますが、周産期医療を通じて産婦人科と、思春期医療や成人へとキャリーオーヴァーする疾患の管理を通じて内科と、さら に様々な小児外科的疾患の管理に際し全ての外科系診療科とも深い関わりを持ちます。そのほかにも小児を扱う全ての診療科と、境界領域における提携が不可欠 になっています。

 小児科医は喘息発作や痙攣などに対する急性期の管理能力を有する事が不可欠である一方で、慢性的な管理・療育を必要とする子ども達をケアしていく事も求めら れます。小児の患者さんはまた家族や学校という周囲の環境によって大きく影響を受ける存在であり、広く社会的または社会医学的な観点からこども達を捉えて いかなければ成りません。

 このように小児科の診療は巾広い知識や技術の体得が求められ、さらには社会的な視野を持つことも要求されます。言い換えますと、小児科は全ての診療科の 中でもおそらく最も総合診療科としての側面を持つところだと思います。従いまして私達はまず第一に、小児の健康福祉のためのプライマリーケアができる小児 科医たらんと心掛けています。

 また一方で、三次病院である大学病院では、医療医学の進歩や高度化に伴い、重症例や希有な症例に対応すべく専門分野の知識や技術を磨いていくことも要求さ れます。私達小児科はひとつの診療科でありながら、いくつもの内科がカヴァーしているのとほぼ同じ数の専門診療班を有しています。『広く、そして深く』ム 私達が小児科医として目指す目標は高くそして厳しく掲げたいと思います。

 それから長崎県の特徴として離島などの医療過疎地域を多く抱えていることが挙げられます。一県一医学部である本県では、地域医療における大きな役割を大学が担ってきます。

 最後にもう一言、医療は『Service』であり、医学は『Science』です。私達は患者さんやその家族の心身にわたる苦しみ悩みに答えていくことが できなければなりません。医療は常に患者さん達が中心であり、そのニーズに答えていくことが私達の使命であることを充分に認識していかなければならないと 思います。さらに患者さんが苦しんでいる病気と闘うためには、しっかりとしたデータに基づき最善の診療ができるように努める義務があります。 『Evidence-based medicine』が決して掛け声だけで終わることがないように、常に私達は勉強を怠ってはいけません。Scientistとしての医師の器量は、何より もまず臨床の場において発揮されるべきものであり、そこで提起された問題に答えるべくさらなる研究へと向かうものだと考えています。

 長崎県下における小児の健康福祉のために、さらには医学の発展に少しでも寄与するために、私達は熱意を持った小児科医の育成と自らの精進に努めたいと思います。多くの皆様方の参加や御意見をお待ちいたします。


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