診療内容(診療グループ):呼吸器外科
1.胸腔鏡下手術
 近年、道具の進歩による鏡視下手術の増加に伴い、胸部手術に関しても胸腔鏡下手術は増加しています。当科でも胸腔鏡手術症例(ロボット支援下手術を含む)は増加しており、全体の60-70%を占めます。
 適応は、小型肺癌(StageⅠAおよびⅠBの一部)、転移性肺癌、良性腫瘍、縦隔腫瘍など広い範囲で行っています。
 メリットは、回復が早く、疼痛も少ない傾向にあり、見た目もよいことです。
 特に最近では、下記に示します肺区域切除術においても胸腔鏡を用いており、より多くの患者さんにそのメリットを享受していただくように努力しております。

胸腔鏡下手術① 胸腔鏡下手術②
2.肺区域切除術
 肺癌における標準的な手術は、肺葉切除術でありました。しかし、近年小型肺癌や他臓器からの転移性肺癌の増加で、より小さく切除し肺の機能を温存する手術である、区域切除術が増加傾向にあります。手術手技としては、高度な技術が求められる区域切除術ですが、当施設でも増加しています。
 当施設の特徴として、胸腔鏡下での区域切除術や、通常見つけるのが困難な場合も多い肺区域の境界を見つけるために新しい手法を用いた手術を行っています。これにより、より早く確実に手術を施行することができます。

肺区域切除術①
引用;コンセンサス癌治療  2014, へるす出版
肺区域切除術②
引用;先端医療シリーズ 呼吸器疾患診療の最先端, 先端医療技術研究所
3.縦隔腫瘍
 縦隔(心臓周囲や椎体の周囲をこのように呼ぶ)に発生する腫瘍で、様々なタイプがあります。その中で、最も多く見られるのは胸腺という免疫を司る脂肪に似た組織から発生する胸腺腫です。早期のものから進行したものまでありますが、早期のものについては、胸腔鏡やロボット支援下で手術を行っています。最近では、炭酸ガスを胸腔内に注入することにより、より大きな視野を確保することで、手術を容易かつ迅速に行う方法を用いています。また、進行症例については、心臓の一部や血管の合併切除を含む拡大手術を行っています。当初は手術が不可能な症例であっても、手術前に化学療法と放射線療法を行うことで、より確実に腫瘍を取り除く手術が行える場合もあり、呼吸器内科、放射線科と連携し、総合的な治療を行っています。

縦隔腫瘍① 縦隔腫瘍②
4.ダビンチを用いた肺癌手術(ロボット支援下肺悪性腫瘍手術および縦隔腫瘍手術)のご案内
 当科では直腸癌に続き、肺癌に対しても2019年2月より Intuitive Surgical社製の daVinci(ダビンチ)という名前のロボットを使用した内視鏡下手術を開始しました。ロボット手術は約1cmの穴を5カ所程度作成し、肺切除を行います。
 2021年3月からは縦隔腫瘍に対してもロボット支援下手術を開始しています。
 従来の内視鏡下手術よりもさらに低侵襲で、傷の痛みもより少なく、入院期間も短期間となりうると期待されます。ロボット手術をご希望される方は、当科へご相談下さい。

ダビンチを用いた肺癌手術① ダビンチを用いた肺癌手術②