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小児泌尿器科疾患

小児泌尿器科疾患とは

ほとんどは良性疾患で、成長とともに自然改善するものから、生活に支障をきたすために泌尿器科的な管理が必要なもの、手術が必要なものまで様々な疾患が含まれます。
具体的な疾患としては、停留精巣、遊走精巣、尿道下裂、性分化疾患、真性包茎、亀頭包皮炎、膀胱尿管逆流症、水腎症、膀胱直腸機能障害、尿失禁、昼間尿失禁、夜尿症などがあり多岐にわたります。

小児泌尿器科疾患の症状

個々の疾患によって症状は異なります。

  • 精巣が陰嚢内に下降していない。
  • 外尿道口の位置や形態異常、陰茎の屈曲など。
  • 亀頭包皮の癒着や炎症反復、尿線異常。
  • 尿路感染により発熱を繰り返す。
  • 胎児期より指摘されている水腎症。腎臓(腎盂)に尿が停滞していることでの嘔吐や哺乳不良(体重増加不良)、側腹部~背部痛をきたすこともあります。
  • 排尿困難、いきんで排尿している。
  • おしっこが近い、我慢できない、間に合わずに失禁する。
  • おねしょが続く。宿泊行事も控えており不安がある。

小児泌尿器科疾患の診断

個々の疾患によって、診断はまちまちです。
基本的に外来でエコー検査や検尿をおこなっており、必要に応じて、VCUG(排尿時膀胱尿道造影)、腎シンチグラフィなど検査もおこないます。膀胱鏡検査や逆行性腎盂造影が必要な場合は、入院の上、全身麻酔下におこなっています。また、MRIやシンチグラフィなど撮影時の安静が求められる場合は鎮静下にもおこないますが、途中で覚醒してしまって情報が不足する場合もあります。
小児の場合は、診察にしても検査にしても、本人への精神的な侵襲を考慮して行う必要があると考えております。

  • 停留精巣では触診と超音波検査で診断可能ですが、触診でも超音波検査でも診断つかない場合は、MRIや審査腹腔鏡を提案する事もあります。
  • 遊走精巣では触診と超音波検査で診断可能です。
  • 真性包茎は触診で診断可能です。
  • 亀頭包皮炎は触診で診断可能です。
  • 膀胱尿管逆流症はVCUG(排尿時膀胱尿道造影)検査にて診断可能です。
  • 水腎症はエコー検査。尿の通過性や分腎機能の確認のため、利尿レノグラフィ(MAG3シンチグラフィ)をおこなうこともあります。水腎症の原因としてVUR(膀胱尿管逆流症)が疑われる場合はVCUG(排尿時膀胱尿道造影)を提案します。
  • 膀胱直腸障害は膀胱内圧造影検査にて評価します。
  • 昼間尿失禁、夜尿においては原因が多岐にわたりますので、1日の排尿回数、1日尿量、1回の排尿量が原因精査の助けになります。その上でエコーで膀胱の形態の確認、腹部レントゲンでの脊椎異常合併の有無の確認、便貯留の有無で便通以上の確認を行い、治療方針を検討します。

小児泌尿器科疾患の治療

ほとんどが良性疾患ですので、適応を見極めてからの治療を提案します。
たとえば、尿路感染をなおすためには、抗生剤による薬物治療をする事も大切ですが、反復する場合には、もっと原因を突き止めなければいけません。病院でのエコー検査やVCUG(排尿時膀胱尿道造影検査)でわかる事もありますが、それ以前に排尿回数が極端に少なすぎたり、おむつの交換回数が少なすぎたりする可能性もあります。
全ての原因を一回きりの診療で分かるわけではありませんので、診療を重ねていくうちに、必要な検査や治療を提案していく事になろうかと思います。

  • 手術加療としては年間70-80例の全身麻酔下手術(検査も含め)をおこなっています。具体的な手術は下記を参照されて下さい。
  • 手術以外の治療についても下記を参照されて下さい。

小児泌尿器科疾患の治療(施術名称)

  • おこなっている手術療法としては、停留精巣固定術、尿道下裂形成術、環状切除術、顕微鏡下精索静脈瘤手術、外陰形成(男児+女児)、膀胱尿管新吻合手術(膀胱尿管逆流症手術)、腎盂形成手術などです。
  • 手術以外の治療としては、間欠導尿、定時排尿、アラーム療法などをおこなっています。
    時には便通を改善する事が症状の改善につながる事もあります。
  • 膀胱直腸障害の管理も行っています。間欠導尿がベースになりますが、間欠導尿管理が困難な場合は、膀胱皮膚瘻ストーマ造設を行い、ストーマ管理をすすめる事もあります。
    小児においてカテーテル留置という管理を長期でおこなっていく事は原則ありません。トラブルをおこすだけでなく、先々に問題をのこしていく事にもつながるものと考えています。
    腸管利用膀胱拡大術も必要な症例にはおこなっております。

長崎大学病院泌尿器科の特色

小児科や小児外科の先生方の協力のもとに診療に従事しております。疾患においても、必要であれば施設の垣根を越えたベストな選択肢を提案できるように努力したいと思っています。
おねしょと塩分過剰摂取の関連性、軽微な脊椎異常の合併との関連、排便障害との関連も気になっており、診療に活かせるようにしています。

関連リンク

日本小児泌尿器学会ホームページ
http://jspu.jp/ippan_010.html
(個々の疾患の説明についてご参照下さい)