ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type-1, HTLV-1)は成人T細胞白血病、HTLV-1関連脊髄症等の疾患を引き起こすウイルスで、長崎県を含む西南日本地域で感染している方が多く存在しています。しかし、感染していても病気になることはほとんどなく、40年以上の長い年月をかけて、感染しているヒトのうち数%のみが発症するとされます。主な感染の経路として、母乳、体液、血液を介したものが想定されています。長崎県は妊婦さんに対してHTLV-1のチェックを行う、HTLV-1が陽性であった場合に、母乳を与えない育て方を指導する等の取り組みを行い、お母さんと赤ちゃんの間でウイルスが感染する確率を大きく減少させることに成功しています。また、1986年以降は全国的に献血血液に検査を行い、HTLV-1が存在する血液は輸血用に使用されなくなったため、輸血による感染もありません。一方で、現在は性行為によると思われる成人間の感染の割合が増加しています。他の性感染症と同様に、どのくらいの人が感染しているのかを明らかにし、感染が広がらないように啓発することは非常に重要なことです。
長崎大学法医学分野では、亡くなられた方の死因究明や事件性の有無を、解剖を通じて明らかにしています。外科手術などを同じように臓器や血液を扱うため、解剖に附される方がもしHTLV-1に感染していた場合、針刺し事故等によって解剖医・解剖技師に感染する危険性があります。そのため、解剖に附される方の血液を用いて、事前にHTLV-1感染症の有無を検査しています。本研究は、その検査結果を性別や年齢等の情報と照らし合わせ、HTLV-1に感染している人に何らかの傾向が有るかどうか等を検討し、今後のHTLV-1感染対策や防止事業に貢献することを目的としてするために行います。
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