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前脳の発生を制御する遺伝子の間の新たな制御関係を発見
(Ishiguro et al., Sci Rep. 2018)

大脳の発生過程の障害の1つに全前脳胞症があります。全前脳胞症では左右の大脳半球の分割が不十分で、さまざまな程度で左右の大脳半球が融合しており、顔面の奇形を伴うこともあります。全前脳症の発症には環境因子と遺伝因子の両方が関与するものと考えられています。全前脳症の発症と関係した遺伝子も報告されており、関与の頻度が高いものから順にSHH, ZIC2, TGIF1, SIX3という遺伝子が知られています。このうち、ZIC2遺伝子とTGIF1遺伝子は遺伝子情報を含んでいるDNAに働きかけて他の遺伝子の発現状態を調節する役割を持つタンパク質(ZIC2タンパク質とTGIF1タンパク質)を作り出します。

大脳は胎児期に作られる神経管の前端にある膨らみ(前脳胞)から形作られます。この過程では細胞の増殖や分化が適切に行われなければなりません。この役割を果たしている1つが、細胞の間で情報を伝えるために分泌される分子で、SHHタンパク質 (図)、Bmp4、Wnt3a, Fgf8レチノイン酸などが前脳の形態形成に重要な役割を持つことが知られています。

ZIC2はこれまでの研究から、これらの分泌因子によって引き起こされる細胞内シグナルと関係を持つことが想定されていましたが、どのようにして前脳の発生を調節しているのかがまだ十分に解明されていません。 この研究で、私たちはZic2がTgif1という遺伝子の発現調節に直接関わることを明らかにしました。直接というのは、TGIF1の遺伝子の近接領域に結合して、TGIF1のメッセンジャーRNAが合成される過程の制御に関わるという意味です。この研究により、ZIC2による脳発生の制御の一端が明らかになり、全前脳胞症の発症機構の解明に貢献するものと期待しています。

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