重症心不全に対するLVAD(エルバド)とは

左室補助人工心臓「エルバド」 (LVAD; Left Ventricular Assist Device) とは
重症心不全
 重症心不全とは、心機能低下が高度で、集中治療を要するような入院を繰り返す心不全です。心不全の重症度の分類においては、NYHA (New York Heart Association) 分類で クラスⅣ、AHA/ACCステージ分類で ステージDに該当します。
 重症心不全の原因となる疾患は、拡張型心筋症や拡張相肥大型心筋症、虚血性心筋症(広範囲の心筋梗塞による心機能低下)、弁膜症、先天性心疾患、心筋炎後心筋症(急性心筋炎による心機能低下が回復しない)など、様々です。
 重症心不全の治療は、生活指導の順守(水分・塩分制限、適切な栄養摂取、過労防止、確実な服薬など)、薬物療法(ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬など)、運動療法(医師の指導、運動処方に従って)といった標準的方法だけでは不十分です。重症心不全においては、終末期ケア/ホスピスや、強心薬の持続点滴、心臓移植、補助人工心臓(LVAD)などによる機械的補助も検討するべき治療の選択肢です。重症心不全の根本的治療は心臓移植 (移植申請時、65歳未満が条件) です。日本国内での心臓移植は、年間40~45例ほどです。しかし、重症心不全患者さんの数と比べると到底足りず、移植を受けるまでに、3年以上の待機が必要です。
 薬物療法等の従来治療のみでは、重症心不全患者さんが心臓移植の順番がくるまで待機することは困難であり、その長期サポートのために機械補助であるLVADが活用されています。

心臓移植希望者数と移植実施数
どんな治療か(他の治療法との違い、合併症等の注意点)
 LVADは、著しく低下した心機能を補助するため、自分自身の心臓に装着する機械です。LVADには、体外設置型(体外式)と植込型があります。1982年より臨床応用が開始された体外式LVADは、心臓移植申請を行う前に、救命目的等で速やかに導入することができます。しかし、管理・調整が難しく、自宅退院ができないという欠点があります。
 一方、植込型LVADは、その名の通りポンプ本体を体内に植え込み、システムコントローラ・バッテリーをキャリーバッグで携行することで、自宅退院も可能となりました。

心臓移植希望者数と移植実施数

 注意点として、機械を体内で駆動させるには、ワルファリンでの抗凝固療法が必要です。出血、脳卒中、感染、機械扱いに伴うトラブル等も起こりえます。
対象となる疾患(適応・除外基準)
 心筋梗塞、心筋症などで、重度の心機能低下をきたした心不全の方が対象です。特に「植込型LVAD」は、各種手続きを経て、日本循環器学会へ心臓移植申請を行い、移植適応と認定されることが条件です。65歳未満で、不可逆性の腎機能障害・肝機能障害がない等の条件を満たす事も必要です。
植込型LVADまでの手続き、治療の流れ、退院後の生活について
 まずは、これまでの心不全治療の見直しと、必要な追加治療・検査を行います。心臓カテーテル検査、心筋生検等は特に重要です。その後、院内での心臓移植検討委員会、九州の心臓移植実施施設である九州大学での検討委員会を経て、日本循環器学会 心臓移植委員会に心臓移植の候補として申請します。そこで、移植適応と判断されれば、植込型LVADは保険診療で使用可能となります(ここまでに3ヶ月以上かかる場合もあり、外来・入院主治医が、これまでの入院経過、検査結果、治療内容等の情報を十分に集めておくことが重要です)。併せて、日本臓器移植ネットワークに、心臓移植レシピエントとして登録します。
 植込型LVADの手術は、当院心臓血管外科に行ってもらいます。術後1~2週間は集中治療室(ICU)で薬剤の調整などを行います。内科・外科・各専門職のチームで診療にあたります。
薬剤調整、心臓リハビリーテーションを進めるだけでなく、患者さん自身・サポートに関わるご家族が植込型LVADの機器の扱い、トラブル時の対応にも習熟してもらう必要があります。自宅の状況確認 (屋内の電源コンセントや、危険箇所の有無、救急車が横付け可能かなど)、試験外出・外泊も含めて、術後およそ数ヶ月で退院となる予定です。
 退院後は定期的に当院外来に通院してもらいます。ワルファリンによる抗凝固療法に問題がないか、コード(ドライブライン)刺入部に感染がないか、機械に問題がないか等を、多職種で確認します。患者さん本人だけでなく、ご家族の精神的ストレスも重要な問題ですので、スタッフがサポートします。
治療成績
・植込型LVAD件数 全国総数: 372件   長崎: 5件

心臓移植希望者数と移植実施数
2016年10月
当科担当・窓口
米倉 剛、 泉田 誠也、佐藤 大輔