長崎大学病院産婦人科・長崎大学大学院医歯薬学総合研究科産科婦人科学分野

学生・研修医の皆さんへ

専門医取得までの道のり

 卒後6年目で産婦人科専門医を取得した後には、各人が希望するサブスペシャリティーの取得を目指すことになります。長崎大学産婦人科には、産婦人科に関連するほとんどすべての分野にサブスペシャリティーについて、専門医が在籍しています。長崎大学産婦人科に在籍すれば、自分が取得を目指すほとんどの資格について、専門医の指導の下で研修を積むことができます。
 各専門医の内容および取得までの道のりについて、専門医からのコメントを掲載します。
① 周産期(母体・胎児)専門医 more
周産期(母体・胎児)専門医を取得するまで
長谷川 ゆり
 産婦人科に入ると3年目(医師になって5年目)に日本産婦人科学会の専門医を取得します。まずはここからです。そのあと、サブスペシャリティーを選ぶことになります。
 どれを選ぶかは自分の興味もそうですが、周りの環境や社会情勢も関係してくると思います。私の場合は2006年の大野病院事件をきっかけとして、前置胎盤症例の紹介患者が爆発的に増加したことでたくさんの前置胎盤、前置癒着胎盤症例を経験したことが大きな転機だったように思います。学会や論文も前置胎盤に関する発表の機会を多く得ました。ちょうどそのタイミングで2009年から周産期(母体・胎児)専門医の試験が開始されました。周産期を中心にしばらくは診療をすることになるだろうと考えていましたし、専門医試験は一番最初の試験が受かりやすいとの(嘘か本当か分からない)噂を聞きつけ、受験しました。専門医試験というのはどれも同じと思いますが、受けるまでの書類作成が思いのほか大変です。何とかそれを乗り越え書類審査に合格すると実際の試験はマークシート方式の筆記試験、小論文と面接です。筆記試験は周産期に関する広い知識を問われます。新生児の問題もあって印象としては難しいなと感じました。何とか、2次審査にも合格し、専門医を取得しました。
 長崎には周産期専門医が2人しかおらず今後は指導的立場で周産期専門医を増やしていこうと考えています。
② 生殖医療専門医 more
生殖医療専門医のなるまで
北島 道夫
 生殖医療専門医は,日本生殖医学会が生殖医療従事者資格制度のもと2006年から認定を開始しました.ART(生殖補助医療技術)を中心とした現在の高度に発達した生殖医療のスペシャリストであり,産婦人科の生殖内分泌領域での臨床専門医資格の1つです.資格制度は2010年に大幅に改定され,指定された認定研修施設および研修連携施設において指導責任医のもと学会の定めた研修内容に沿って3年間臨床研修を行ったのちに審査を受けることになっています.2013年4月1日の時点で531名の生殖医療専門医が認定されています.
 長崎大学産婦人科は指定認定研修施設であり,現在3名の生殖医療専門医が在籍し,1名が生殖医療専攻医として登録し研修しています.

 生殖医療専門医になるには以下のことが必要です.

試験(審査)を受ける
(ア)一次審査=書類審査
(イ)二次審査=筆記試験+口頭試験
受験資格
(ア)日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医である
(イ)認定研修施設で3年間の研修を修了している
  認定のための研修を開始するには以下の要件を満たす
1.日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医である
2.研修開始時に2年以上日本生殖医学会会員である
研修開始登録が必要である
3年間のうち少なくとも1年間以上認定研修施設に専任で所属の上で研修を行う
一般不妊症例を5例以上,体外受精−胚移植または顕微授精症例を5例以上,計10例以上を経験し10例分についてレポートを作成する.
3年間で3回日本生殖医学会学術講演会に出席する
日本生殖医学会学術講演会で筆頭演者として1回以上発表する
生殖医学に関する論文を査読のある医学雑誌に筆頭演者として1編以上発表する
学位を取得している者は⑥⑦は免除される.
あるいは
すでに生殖医学に関する論文を査読のある医学雑誌に筆頭演者として1編以上発表している者は⑥⑦は免除される.
(ウ)講習会を受講して単位を履修する
   新規認定には15単位すべて受講が必要
単位数 単位項目 新規認定
必須項目
更新認定
必須項目
1 (1)生殖医療総論・トピック
1 (2)生殖倫理・関係法規
1 (3)生殖遺伝  
1 (4)女性生殖生理・生殖内分泌  
1 (5)男性生殖生理・生殖内分泌  
1 (6)生殖免疫、感染症等  
1 (7)治療総論・検査・診断
1 (8)一般治療各論I(排卵誘発)  
1 (9)一般治療各論II(女性手術、不育症)  
1 (10)一般治療各論III(男性不妊)  
1 (11)一般治療最近の進歩
1 12)生殖補助医療総論・管理
1 (13)生殖補助医療各論I(体外受精)  
1 (14)生殖補助医療各論II(顕微授精)  
1 (15)生殖補助医療最近の進歩
 
日本生殖医学会の年会費を完納している
審査料を払う=二次審査には20,000円かかります(合格したら登録料に50,000円かかります)
認定期間は5年間で,5年後の更新のためには条件があります.
  (ア)認定期間中の日本生殖医学会の年会費を完納している.
(イ)日本生殖医学会学術講演会に5年間で3回以上出席する
(ウ)関連学会への出席,学会発表および論文発表により,5年間で合計100ポイント以上を取得すること
  ① 日本生殖医学会学術講演会 1 回20 ポイント
② 学会参加または業績によるポイント
*ポイントを取得できる学会
(10 ポイント)
各ブロックで開催する学術講演会(旧・地方部会)(2012 年度より摘要)
(5 ポイント)
日本産科婦人科学会、日本泌尿器科学会、ASRM、ESHRE、IFFS、国際体外受精会議、世界ヒト生殖会議、日本受精着床学会、日本生殖内分泌学会、日本生殖免疫学会、日本アンドロロジー学会、日本哺乳動物卵子学会、日本産科婦人科内視鏡学会
その他生殖医療に関連する学会で生殖医療従事者資格制度委員会が認めるもの
*学会発表および論文発表により取得できるポイント
【学術発表】
生殖関連学会発表(日本) 筆頭 10ポイント連名5ポイント
生殖関連学会発表(国際) 筆頭 10ポイント 連名5ポイント
【学術誌・著書等における論文発表】
生殖関連和文雑誌掲載論文 筆頭 20ポイント 連名10ポイント
生殖関連欧文雑誌掲載論文 筆頭 20ポイント 連名 10ポイント
(エ)講習会を受講して単位を履修する(6単位項目,上記の表を参照)
(オ)認定期間中に生殖医療を継続していること
(カ)日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医である

 長崎大学産婦人科では最新の設備と経験豊かな専門医のもと,症例毎に非常に密度の濃い研修を受けることができます.大学病院ですので,一般不妊治療,内視鏡あるいは不育症などART以外の不妊治療,婦人科内分泌疾患も総合的に学ぶことができ,生殖医療専門医のための研修が過不足なく行えます.学会発表,論文作成については,邦文英文を問わず親身に指導致します.また,研修期間中に基礎的な実験などに興味がある方にも対応することができます.
 豊かな自然とグルメを満喫できる長崎で研修して生殖医療専門医になってみませんか?
③ 婦人科腫瘍専門医 more
婦人科腫瘍専門医への道
金内 優典
 産婦人科専門医を取得したのちに、婦人科腫瘍学をサブスペシャルティーとする者は婦人科腫瘍専門医を目指すことになります。必要とされる要件を大まかに申しますと、婦人科腫瘍学会に入会し、5年間の間に通算3年指定修錬施設でカリキュラムに則り必要症例数の修錬を積み、その間にがん治療認定医の資格を取った上で受験資格が得られます。などなどは、実際に自分の進む道を決めた時に学会ホームページで調べて下さい。申請条件も変化していきますから、現在の状況を示しても意味がありませんので。
 さて、と言うわけで自分が腫瘍専門医として思うことや、実践してきたことを述べたいと思います。あくまでも自分の場合の話であることをお許しください。婦人科腫瘍専門医の定義として腫瘍学会専門医規則にも示されていますが、婦人科腫瘍専門医とは「あらゆる女性性器がんおよびその合併症を適切に処置、あるいはコンサルテーションに対処できる必要がある。女性性器がんの広汎な手術手技に精通し、放射線治療、化学療法等に関する知識と経験をもったもの」とされています。私自身このようなことを念頭に置いてきたわけではありませんが、婦人科悪性腫瘍を専門としようと決めてからごく自然にこの文言に沿った生き方をしてきたように思います。特に“手術手技に精通する”という言葉には重い意味があるように思います。手術には放射線治療、化学療法とは明らかに一線を画す責任感と能力が要求されるからです。自分自身必ずしも自分の担当患者さんでない手術であっても、また再発その他で他科に手術を依頼した場合であっても、時間があれば必ずその手術室で手術を見学し修錬を積んできました。その気持ちは今でも変わらず持ち続けております。
 専門医乱立の今の状態の中で、専門医資格を真の専門医たらしめているのはその責務に足る精神を持ち合わせているかどうかであると私は信じています。長崎大学産婦人科では婦人科腫瘍専門医取得のための症例数は十分にあります、腫瘍専門医としてのタイトルだけがほしい方はそれはそれで構いません。しかし、我々を見て知っていただきたいのは婦人科腫瘍専門医たる心構えです。20年近く婦人科がん患者だけに接してきた自分はこの道が“いばらの道”であることを自覚しています。こう申しては何ですが、周産期や生殖医療を専門とする方々に比べると、“うれしい”ことがあまりに少なすぎる領域です。そんな孤独に立ち向かうために、“にげない”、“ぶれない”、“あきらめない”そんな心を養う研修の場を提供することこそ私の使命であると信じています。
④ 婦人科内視鏡技術認定医 more
内視鏡技術認定医を取得するまで
松本 亜由美
 私はなぜ産婦人科という分野を選択したかといいますと、大学4年生のときに受けた産婦人科の婦人科腫瘍(とくに悪性腫瘍)の講義が大変面白かったからです。ここで産婦人科に興味を持ち、長崎大学産婦人科医局へ入局いたしました。2年間の研修医時代を経て3年目に、関連病院に転勤し、その当時の部長の藤下先生に産婦人科の外来や分娩や開腹手術や、腹腔鏡手術について厳しく指導いただきました。その時に初めて本格的な腹腔鏡手術の基礎を教えていただきました。先生の助手やカメラマンをさせていただきながら教わることが多すぎて、腹腔鏡ノートを作りその日の手術中に、注意していただいたことをひたすら書いていく毎日でした。初心者の私にとっては鉗子の向きや使い方がわからずにとにかく覚えるしかありませんでした。B型の私にこんな細かい操作は向いてないのではないか、開腹手術より時間がかかるなあなどと最初は思いながらも、毎日が過ぎていきましたが、少しずつ指摘される回数が減って行き、気づけばある程度、自由に自分が思った通りに鉗子を動かすことができていました。とは言っても腹腔内での体内縫合は難しく、朝7時半から研修医の先生とトレーニングBOXでタイムを競い合い、お互いにアドバイスするといった練習を行っていきました。練習し、少しずつ縫合にかかる時間も短縮していくうちに、技術認定医取得を目指すことを決めました。済生会長崎病院へ転勤し、無事に技術認定医を取得することができました。産婦人科において内視鏡技術認定医試験に必要なものは論文および学会での発表、そして何といっても未編集のビデオ(DVD)です。面接や筆記試験はいりません。私自身、器用な方ではなく最初はどちらかと言うと苦手だった腹腔鏡を自分のサブスペシャリティーにするとは当時は全く思っていませんでした。内視鏡技術認定医試験は決して簡単ではないですが、練習すれば必ず合格しますし自信もつき、より一層手術の幅も広がると思います。特に内視鏡に対して苦手なイメージを持っている女性が多く、だからこそ女性の内視鏡技術認定医も必要とされていると思います。大学病院では良性腫瘍は勿論、最近では悪性腫瘍に対しても腹腔鏡手術を行っています。できる限り指導していきたいと思いますのでみんなで練習してまだ少ない技術認定医を目指しませんか?
⑤ 臨床遺伝専門医 more
内視鏡技術認定医を取得するまで
三浦 生子
 日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」では、“出生前に行われる遺伝学的検査および診断は,十分な遺伝医学の基礎的・臨床的知識のある専門職(臨床遺伝専門医等)による適正な遺伝カウンセリングが提供できる体制下で実施すべきである”と明記されています。また、生殖医療の領域においては、染色体異常あるいは遺伝子異常に起因する不妊症あるいは習慣流産の診断と治療について情報提供できるスキルは必要です。最近では、第3者による卵子提供や代理母などを求めて海外への渡航治療を選択するケース、子が出生を知る権利とそれに伴う悩み・葛藤、さらには戸籍など親子関係についての法律的かつ倫理的な問題もクローズアップされています。婦人科腫瘍領域でも、lynch症候群(大腸がん・子宮体がんなど)や遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の診断と治療には、産婦人科専門医としてのスキルに加えて遺伝学的な診察技術が求められます。
 これからの産婦人科医療には遺伝医療の専門知識も必要であり、その専門性を身につけているか否かについての第3者による客観的評価は、日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会が認定する臨床遺伝専門医を取得することです。長崎大学産婦人科では、遺伝カウンセリングから遺伝学的検査の実践まで、臨床遺伝専門医・指導医が懇切丁寧に指導していますので、臨床遺伝専門医試験に合格可能なスキルを確実に習得することができます。
 以下に臨床遺伝専門医を取得するための要件と長崎大学産婦人科で研修するメリットを述べます。
  1. 産婦人科医であれば、基本領域の専門医資格として、日本産科婦人科学会専門医を取得していることが必要とされます。そして、日本人類遺伝学会もしくは日本遺伝カウンセリング学会へ入会後3年以上の会員歴と指定研修施設での3年間の研修が必要です。長崎大学産婦人科は臨床遺伝専門医養成の認定研修施設であり、臨床遺伝専門医・指導医ならびに認定遺伝カウンセラー(日本第一号)ともに在籍していますので、最短期間での専門医取得が可能です。
  2. 受験に必要な遺伝カウンセリングの経験症例数は20件以上です。長崎大学産婦人科では、遺伝カウンセリング室での毎月20件以上の遺伝カウンセリングを実践しています。また、出生前診断に必要とされるNIPTなどの非確定的検査から羊水穿刺、絨毛採取、臍帯穿刺などの確定的検査までの説明とその実施について、臨床遺伝専門医・指導医がマンツーマンで指導しています。さらに、長崎大学産婦人科では、分子遺伝学の専門家と連携して遺伝子診断も行っております。単なる遺伝医療の知識を情報提供するだけの専門医ではなく、総合的な遺伝子医療と遺伝カウンセリングを実践可能な臨床遺伝専門医になることができます。
  3. 受験資格には、2編以上の筆頭者としての遺伝学に関する学術論文(学会発表2回で論文1編に換算)が必要です。長崎大学産婦人科では、毎年秋に開催される日本人類遺伝学会へ参加し、筆頭者として演題発表できるように指導しています。また、母体血に流入する胎児・胎盤由来のRNAに関する研究を行い、学術論文の投稿発表も指導しますので、同時に医学博士(学位)を取得することも可能です。
  4. 臨床遺伝専門医試験は、年一回10月頃に実施され、筆記試験と面接試験があります。試験には、臨床遺伝の知識に加えて分子遺伝学の知識も問われます。長崎大学産婦人科では、難しい分子遺伝学についても実地研修の中で解りやすく指導しますので、試験合格に必要なスキルが自然に身につきます。
  5. 長崎大学産婦人科では、バランスの良い臨床遺伝専門医の養成を目指しています。出生前診断のあり方などについて、長崎遺伝倫理研究会を立ち上げて、法律、倫理、心理、医学(産婦人科と小児科)の専門家そして患者も参加し討論しています。また、長崎医療判例研究会を開催して、長崎の弁護士と産婦人科医が過去の判例について討議する試みも行っています。このような取り組みは、日々の臨床において医学に偏らない物の見方を養うことができます。臨床遺伝専門医を目指す産婦人科医には、ぜひ長崎大学産婦人科で研修して、医療には多方面の意見を取り入れることの重要性を体験していただきたいと思います。
⑥ 超音波専門医 more
超音波専門医取得に向けて
三浦 清徳
 産婦人科の日常診療において、超音波検査は産科や婦人科の領域を問わず、幅広く利用されています。産婦人科医にとって、超音波診断技術のスキルアップは必要不可欠なことだと思います。一定水準以上の専門的な超音波診断技術を身につけているかどうかの客観的評価を受けるには、日本超音波医学会が認定する超音波専門医を取得する必要があります。長崎大学産婦人科では、日常診療の中で超音波専門医・指導医がマンツーマンで指導していますので、超音波専門医試験に合格可能なスキルを自然に習得することができます。
 以下に超音波専門医を取得するための要件と長崎大学産婦人科で研修するメリットを述べます 。
  1. 日本の医師資格を取得し、日本超音波医学会へ入会後5年以上の会員歴と指定研修施設での5年間の研修が必要です。長崎大学産婦人科は超音波専門医養成の指定研修施設であり、超音波専門医・指導医ともに在籍していますので、最短期間での専門医取得が可能です。
  2. 受験に必要な経験症例数は500件以上です。長崎大学産婦人科では、全ての超音波検査において超音波専門医・指導医の指導を受けることができます。産科外来では、スクリーニング検査として妊娠初期の頭臀長や大横径による妊娠週数の確定、妊娠中・後期の大横径、腹囲、大腿骨長あるいは推定体重を用いた発育・形態の評価技術を身につけます。そして、胎児発育・形態異常が疑われるときは、その原因特定のために、より精密な検査を施行し母児を管理するスキルを養います。一方、婦人科外来では、超音波検査による不妊症や婦人科腫瘍の診断・治療効果の評価法などを学びます。
  3. 受験資格には、5編以上の筆頭者としての学術論文もしくは学会発表が必要です。長崎大学産婦人科では、毎年5月に開催される日本超音波医学会へ参加し、筆頭者として演題発表できるように指導しています。また、超音波検査を用いた研究と学術論文の投稿発表も指導しますので、同時に医学博士を取得することも可能です。
  4. 超音波専門医の試験は、年一回7月もしくは8月に実施されます。試験には、臨床診断の知識に加えて超音波工学の知識も問われます。長崎大学産婦人科では、難しい超音波工学についても実地研修の中で解りやすく指導しますので、専門知識のもとに超音波機器の扱い方からプローブの選択、そして検査の実施と評価を行えるスキルが自然に身につきます。
⑦ 日本女性医学会認定女性ヘルスケア専門医 more
日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医
北島 百合子
 近年、女性の平均寿命は90歳に近づきつつあります。しかし、介護を必要としないで自立した生活ができる期間(健康寿命)とは15年から20年近くかけ離れています。すべての女性が寿命まで健康に自立して生活するためには、病気になった後の治療よりも健康な頃からの予防が非常に大切であることが分かっています。
 日本女性医学学会は、2011年3月までは「日本更年期医学会」として活動していましたが、その後現在の「日本女性医学学会」という名称に変わりました。
 そして、会員の先生は、すべての年齢層の女性が健康な一生を過ごすために診療・研究を行っています。具体的には、更年期障害、骨粗鬆症、メタボリックシンドローム、婦人科心身症、ホルモン補充療法、漢方療法、思春期のヘルスケアなど多岐にわたった内容になっています。
 学会には、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医という専門資格があります。女性ヘルスケア専門医になるためには、学会に3年以上在籍し、学会等に参加して受験資格を得た医師が、筆記試験と面接試験を受ける必要があります。
 私がこの学会に初めて参加した時、今までの産婦人科領域とは異なる新しいテーマに驚き、そしてこれからさらにニーズが高まる学会だと嬉しくなるのを覚えています。まだまだ研究の対象が広がる学会です。さらにたくさんの専門医が増えてくれることを期待しています。
⑧ 漢方専門医 more
日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医
吉田 敦
 私が始めて漢方医療に興味を持ったのは、卒後9年目で福岡の田川市立病院に勤務している時でした。もともと漢方といえば 当帰芍薬散と葛根湯しか知らず、月経困難症には馬鹿の一つ覚えのようにだれにでも当帰芍薬散を処方するような私に、担当のMRさんがとても熱心に漢方医療を紹介してくれました。頻回に製品説明会を開いてくれる(もちろん当初はお弁当が目当てだったのですが)うちに実際に処方してみようという意欲がでてきて、見よう見まねで使用しはじめるようになります。すると、そのうち劇的に効果を示した症例に出会うことができ、漢方をより深く勉強したいと思うようになりました。幸運なことに、隣の飯塚市に漢方診療で名高い飯塚病院があり、定期的に漢方に関する勉強会が開催されていたので、それに参加させて頂き漢方に関する知識を増やすことができました。勉強会の際に当時の漢方診療科のチーフであった三潴(みつま)忠道先生のところに押しかけ、東洋医学会入会の推薦書(当時は指導医の推薦がないと入会できませんでした)にサインをいただき、学会に入会したのもその頃です。

 東洋医学会のホームページには、漢方専門医について、下記のように掲載しています。
「西洋医学的な専門医資格を取得した上で、さらに漢方医学を充分に修得し、漢方独特の診察を行って、患者様一人一人の症状や体質に適した漢方医療を提供することができる医師です。」 

 漢方専門医といっても、漢方薬ばかりを処方するわけではありません。漢方の特徴は、同じ症状、西洋医学的には同じ病名でも、患者1人1人に異なった処方をすることです。いわゆるオーダーメード医療に近いともいえるのではないでしょうか。
 もちろん西洋医学の薬も処方しますが、西洋医学的な手法で症状が改善しない場合に、漢方という手段を持っていると、大変役立つことがあります。多くの引き出しをもっていることは、医師にとってとても重要なことと思います。

 漢方専門医を取得するには、他の専門医と同様にまず産婦人科の専門医を取得していることが条件になります。
 東洋医学会が示している専門医取得の必要条件は下記の通りです。

 「3年以上継続して本会会員で所定の単位数(7単位)を取得し、学会が定める研修施設(長崎大学病院は指定研修施設になっています)で3年以上東洋医学の臨床に修練を積んだ者。
【認定方法】
 50症例の一覧及び、そのうち10症例の臨床報告を提出し、認定試験(筆記試験、口頭試問)に合格すること。」 すなわち、最短であれば卒後9年で専門医を取得できます。
 具体的にはまず学会に入会たうえで、学会に専攻医登録と研修手帳取得の申し込みをする必要があります。詳細は東洋医学会のホームページをご覧下さい。

 漢方の世界は大変奥が深く、私もまだまだ山の裾野にいる段階です。頂ははるか高くにあり、まだまだその姿すら見ることができませんが、皆さんも長崎大学で一緒に産婦人科の漢方診療を勉強して、山の頂を目指していきませんか?
⑨ マンモグラフィ読影認定医 more
増﨑 雅子
乳癌検診について
 近年、日本人女性のがんの罹患率トップは乳がんです。人口10万対93人、生涯罹患率は15人に一人と言われます。年間死亡数も12000人を超え、部位別死亡者数では大腸、肺、胃に次いで第4位です。また、乳がんの特徴として若年に発症する傾向があり罹患のピークは40代後半から50代前半にあります。「お母さん」と呼ばれる年代の人たちが、乳がんになって亡くなることが多いため、別名マザーキラーとも言われます。しかし、罹患率トップ、死亡率4位であることからもわかるように乳がんは早期発見が可能な癌でもあります。このため乳がんの治療を考えるときに「検診」は大変重要なファクターになってきます。 1997年に日本乳癌検診学会が中心となり関連6学会(乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本産婦人科学会、日本医学放射線学会、日本放射線技術学会、日本医学物理学会)から推薦された委員によってマンモグラフィ検診精度管理中央委員会(以下、精中委と略)が設立されました。マンモグラフィによる乳がん検診を行うにはこの委員会が主催する(または共催する)マンモグラフィ読影講習会、試験を受けて評価AまたはB以上をとる必要があります。全国にマンモグラフィ読影認定医は10000人を超えますが、まだまだ不足といわれています。ちなみに長崎県下では現在約140人の先生方が認定資格を取得されています。
認定受験の実際
 実際に認定をとるための手順を説明します。以下は私見が入りますが悪しからず。まずインターネットで精中委のホームページにいくと全国の講習会予定が掲載されていますので、ここから講習会への申込をします。1回に50人ほどしか受け付けられないので早く申込みを行わないとなかなか参加できません。講習会はふつう土日の2日間をかけて行われます。土曜日の朝9時から夜19時まで受講、さらに日曜日9時から12時まで受講してその後13時から15時まで試験、当日に合否(評価A~D)がでます。約10人グループにわかれて2日間みっちりの講習ですからかなりハードです。受講者は資格更新のために来ているベテラン先生から全くの初心者の先生までいますのでマンモグラフィが初めての産婦人科医でも心配はいりません。先にも書きましたが、読影認定医は不足ですので精中委は認定資格を多くの先生にとって欲しいのです。乳がんの疫学、病理、マンモグラフィの原理、実際の読影、腫瘍の穿刺まで初歩から懇切丁寧に教えていただけます。ただし、試験は本物のマンモグラフィ100例(普通は左右あるので200枚)を読影、カテゴリ―までつけて診断し感度80%、特異度80%以上をとらなければ評価Bは取れません(評価Aは90%を超えなければなりません)。試験には本でもノートでも持ち込み可です。知識ではなく読影力を試験されます。結構ビギナーズラックで合格する先生もいます。私の隣で受けていた外科の若い先生もほとんど乳がんの診療はしたことない、と言いながら評価Bをとっていました。ただ産婦人科医は平常業務でマンモグラフィという画像に接する機会が少ないので講習前に正常でも異常でも構わないので実物のマンモグラフィをある程度見ていかれた方が良いと思います。講習会参加費は42000円ですが50人の生徒に講師陣が約15人という手厚い講習会で大変勉強になります。資格取得後は5年ごとに更新の必要があります。更新者専用のコースというのもあり、こちらは21000円で受講できます。
 認定を取得するのに学会所属が*年以上、論文*編などという条件が付くものが多いなかで全くの初心者でもとれてしまう認定医です。しかし、女性医療の中での乳がんの重要性を考えると今後需要の多い資格であり、かつ一定の技量を要求されるものでもあります。乳がんにかかわっていく場合はこれが基礎となる資格でもあり、興味のある先生にはぜひとっていただきたい認定資格です。
⑩ 日本産婦人科乳癌学会 乳房疾患認定医(準備中)
(平成30年4月現在、在局者)
専門医一覧
日本産科婦人科学会 専門医 増﨑英明、増﨑雅子、三浦清徳、吉田 敦、吉武朋子、北島道夫、野々下晃子、三浦生子、嶋田貴子、藤原恵美子、長谷川ゆり、黒崎真紀、平木裕子、濵口大輔、北島百合子、森﨑佐知子、高野 玲、松本加奈子、原田亜由美、河野通晴、森﨑慎太郎、下村友子、阿部修平、荒木裕之、東島 愛、塚本大空、松野聖子、村上優子、福島 愛、村上直子、梶村 慈、川下さやか、淵 直樹、宮崎恭子、大橋和明
日本産科婦人科学会 指導医 増﨑英明、三浦清徳、吉田 敦、北島道夫、嶋田貴子、長谷川ゆり、濵口大輔
母体保護法指定医 三浦清徳、長谷川ゆり、濵口大輔、阿部修平、東島 愛
日本超音波医学会 専門医 増﨑英明、増﨑雅子、三浦清徳、吉田 敦、長谷川ゆり、河野通晴
日本超音波医学会 指導医 増﨑英明、三浦清徳
日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医 増﨑英明、増﨑雅子、三浦清徳、野々下晃子、三浦生子、長谷川ゆり
日本人類遺伝学会 指導医 増﨑英明、三浦清徳
医日本生殖医学会 生殖医療専門医 三浦清徳、北島道夫
日本生殖医学会 生殖医療指導 増﨑英明
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