長崎大長崎大学大学院医歯薬学総合研究科形成再建外科学分野・長崎大学病院形成外科

疾患の紹介

疾患の診療案内

長崎大学形成外科で治療を行う疾患について解説を行います。
頭蓋変形・頭のかたち外来
病 名: 位置的頭蓋変形症
解 説:

欧米では新生児、乳児のうつ伏せ寝が推奨されることにより、乳児の突然死が急増した歴史があります。それにより、1992年から乳児は仰向け寝が推奨されるようになりましたが、後頭部頭蓋変形の乳幼児の発症を急増させる結果となりました。
ヘルメット治療とは『位置的頭蓋変形症』に対して一定期間ヘルメットを装着することにより、手術でなく頭蓋の外から頭蓋の形状を正常に再形成するための矯正治療方法です。
米国では1990年代からヘルメット治療が行われており、日本国内においては、2007年から米国製の医療機器を使用したヘルメット療法を開始しています。
2013年には、日本の温暖湿潤気候に適応し、かつアジア人の皮膚にも優しい純日本製ヘルメット『アイメット』が開発され、数多くの大学病院にてヘルメット療法に導入されています。2021年には、アイメットの後発品『クルム』が開発され、さらに2024年には、クルムの後発品『クルムフィット』が開発され、それらを用いたヘルメット療法が開始されています。
これまで15,000例以上の患者さんがジャパン・メディカル・カンパニー社製のヘルメットを使用して治療しており、多くの赤ちゃんの頭のゆがみを矯正してきました。(2025年4月現在)

治療内容

この治療では、次のヘルメットを使用します。

  • 医療機器承認番号:30500BZX00256000
  • 頭蓋形状矯正ヘルメット:クルムフィット

ヘルメットの希望色について:ピンク、ホワイト、ブルーを用意しています。
費用負担などについて:55万円(税別)を一括前払い
お支払い方法について:現金またはカード払いOK

対象となる患者さん

病的頭蓋変形がなく、位置的頭蓋変形症と診断された方を対象とします。
この治療では、上記の0歳児の乳児の患者さんを対象に行われます。そのため、ご家族など代諾者の方にもご説明し、同意をいただくこととなりますので、ご理解ご協力をお願いします。

治療の適応と期間

患者さんの治療適応月年齢は、2か月~10か月を基本とします。しかし、同じ月年齢においても、大泉門の閉鎖の程度には個人差がありますので、実際には、外来診療時に医師の診察にて最終的に治療適応の有無を診断します。
治療期間は、平均6か月を目安としますが、矯正治療効果の進捗状況にて、主治医との相談で変更していきます。

顔面外傷・顔面骨骨折

顔面に生じた様々な外傷に対応いたします。
顔面神経の損傷や顔面骨骨折(頬骨骨折・眼窩底骨折・前頭骨骨折・下顎骨骨折など)に対して適切な手術を行い、整容面に配慮しつつ、機能を最大限回復させることをめざします。

唇裂・口蓋裂・顎列

矯正歯科と連携しながら生後から成人期にかけて一貫した治療を提供いたします。生後3カ月ごろの唇裂初回修正術、1歳ごろからの口蓋裂手術、7-9歳頃の顎列骨移植手術、成人期にかけての上下顎頤骨切り術を行っています。必要や希望に応じて口唇や鼻部の修正術を行います。

頭蓋・顎・顔面の先天異常

頭蓋骨早期癒合症や頭蓋骨の病的な変形に対して脳神経外科と連携し手術を行っています。
先天性疾患に伴う上下顎の変形や巨口症などの顔面裂に対する治療も行います。

手・足の先天異常


多指症・多合指症や裂手症、巨指症などの診療を行っています。指が伸ばしにくくなる握り母指や屈指症など整容面だけでなく機能を追求した治療を行っています。


多合趾症や足趾短縮症など様々な疾患に対応しています。

乳房再建

乳がんの術後などで乳房を失った患者さんに対して乳房再建術を行っています。ティッシュエキスパンダーやインプラントなどの人工物による再建や、自分の体の組織を用いた有茎広背筋皮弁や遊離腹部皮弁(DIEP flap)などでの再建を行います。
乳房再建後に乳輪や乳頭の再建も行うことができます。

顔面神経麻痺

先天性の顔面神経麻痺やウイルス感染や外傷後、腫瘍切除後に生じる後天性の顔面神経麻痺に対して手術をおこなっています。動的再建術と静的再建術の二種類があり、患者様の症状に合わせて適切な手術を行っております。

頭頚部再建・四肢再建

頭頚部の悪性腫瘍(癌)の切除後に生じる組織の欠損に対して、筋弁や遊離皮弁による再建を行っています。交通事故などの外傷や大きな腫瘍切除後に生じる四肢の組織欠損に対しても筋弁や遊離皮弁、植皮による再建を行います。

耳の先天異常

小耳症、立ち耳、折れ耳、副耳など耳が変形・欠損している患者様に対しての手術を行っています。
耳介の変形が軽度であれば装具による矯正でも大きな効果が得られることがあります。
耳の軟骨が固まり始める前の方が矯正の効果は高いので、生後間もないお子様であってもお気軽にご紹介ください。

リンパ浮腫

保存的に圧迫療法を行うことが多いですが、リンパシンチグラフィーなどの検査による診断の後、手術適応のある場合には難治性のリンパ浮腫に対して顕微鏡手術によるリンパ管細静脈吻合術(LVA)を行います。

手の外傷・切断指

手指切断や四肢切断に対しての再接着術も緊急で行っています。腱が癒着することによる機能の低下が生じた場合は腱剥離術や腱移行術を行い、回復を図ります。

熱傷

熱傷に対して軟膏治療での治癒が難しい場合は手術を行います。デブリードマン(壊死組織の切除)や植皮術で治癒を目指します。挿管や大量の輸液など全身管理が必要になる広範囲熱傷に対しても救急科と連携しながら治療を行います。熱傷の治療後に起こる瘢痕の拘縮に対しても、拘縮を解除する瘢痕修正術を行っております。

肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮

外傷や手術後の創部が盛り上がって肥厚性瘢痕になったり、ピアス穴からケロイドが生じることがあります。当科ではステロイドテープの貼付やステロイドの注射による治療や手術による切除、また放射線科と連携して電子線照射など行うなど、様々な治療を行っております。

皮膚腫瘍

粉瘤や石灰化上皮腫などの良性腫瘍、基底細胞癌や有棘細胞癌などの悪性腫瘍の切除、その後の再建を行っております。
脂肪腫などの皮下腫瘍も切除を行っております。

難治性潰瘍・糖尿病性潰瘍

静脈うっ滞性潰瘍や糖尿病に伴う皮膚潰瘍や壊死に対して治療を行っております。必要であればインソールや装具を用意して治療に当たります。PRPやEPIFIXといった最新の治療も取り入れております。

血管腫・母斑・あざ

当科ではVビームレーザーを導入しており、外来でのレーザー治療を積極的に行っております。目の近くなど照射が難しい場合や、範囲が大きい場合は全身麻酔下でのレーザー治療も行っております。
またリンパ脈管筋腫症に対するラパリムス(シロリムス)による内服治療の導入も行っております。
お気軽にご相談ください。

その他・その他の先天異常

他にも褥瘡・毛巣洞・腋臭症・副乳・デュプイトラン拘縮・臍ヘルニア・巻き爪・陥入爪・舌小帯短縮症・睫毛内反・睫毛外反など形成外科一般の治療を広く行っております。
お気軽にご相談、ご紹介ください。

 

手術の解説

病 名: 乳がん
目 的:

乳癌切除後に伴い、乳腺組織・脂肪組織が欠損するため自家組織(広背筋皮弁)による乳房再建を行います。乳房の大きさや本人のご希望から、広背筋皮弁による自家組織再建を行います。
広背筋皮弁は、広背筋と皮膚、脂肪を血管が繋がった状態で胸部に移植する方法です。

手術方法:

はじめに、乳腺外科が腫瘍を含めて乳腺を全切除します。
乳輪乳頭と腫瘍直上の皮膚を温存または切除し、腋窩リンパ節はセンチネルリンパ節生検でリンパ節の一部を摘出する予定です。その後、形成外科にて乳房再建を行います。

① 広背筋皮弁の挙上
背部に25cm程度の皮膚切開をして、広背筋皮弁を挙上します。筋皮弁の尾側に脂肪組織を付加してボリュームを増やします。

動脈皮弁術及び筋皮弁を用いた乳房再建術(広背筋皮弁術)① 広背筋皮弁の挙上

② 背部の閉創
傷は縫縮して、1本の傷となります。
皮下にドレーンを2本入れて、血腫や漿液腫を予防します。

③ 筋皮弁の固定
乳房皮下に入れる前に、ICGテスト(インドシアニングリーン試験)を行い、血流評価をします。血流の悪い部分は切除します。挙上した筋皮弁を乳房皮下ポケットに移動させて、膨らみを作ります。形が整うように、乳房皮膚や大胸筋と固定します。切除された乳輪乳頭と皮膚の部分に筋皮弁の皮膚を当てはめます。

動脈皮弁術及び筋皮弁を用いた乳房再建術(広背筋皮弁術)③ 筋皮弁の固定

④ 閉創
乳房にも血腫ができないようにドレーンを2本入れます。傷を閉じて終了です。

動脈皮弁術及び筋皮弁を用いた乳房再建術(広背筋皮弁術)④ 閉創

術直後は肩の挙上は控えてください。肘を曲げることは問題ないので、歯磨きや洗顔などは可能です。肩の運動は術後3週から始めます。
術後血腫が形成された場合は、緊急手術を行う場合があります。
漿液腫が貯留することもあり、入院中もしくは外来にて貯留部位に針を刺して吸引する処置が複数回必要になる場合があります。

病 名: 乳がん
目 的:

乳癌手術(乳房切除)と同時に自家組織による乳房再建を行います。さまざまな再建方法がありますが、本人のご希望により腹部からの自家組織再建(遊離腹部皮弁)を行います。乳房の下垂、ボリューム、柔らかさなどを考慮するともっとも乳腺に近い仕上がりとなります。

手術方法:

はじめに、乳腺外科が腫瘍を含めて乳腺を全切除します。
乳輪乳頭と腫瘍直上の皮膚を温存または切除し、腋窩リンパ節はセンチネルリンパ節生検でリンパ節の一部を摘出する予定です。その後、形成外科にて乳房再建を行います。
乳腺外科の処置が終わったのちに形成外科に移ります。

① 移植床血管の展開
みぎ内胸動静脈に血管吻合する予定としています。
乳輪乳頭切除部から胸の正中側に剥離をすすめ、内胸動静脈を展開します。第3肋軟骨を切除し、その下にある血管を出します。血管が細かったりして吻合に適さない場合は、第2肋軟骨を摘出して太い位置に吻合したり、反体側(ひだり)の内胸動静脈やみぎ胸背動静脈に吻合することがあります。その際、血管を展開するために補助切開や追加で肋軟骨を切除することになります。

② 腹部皮弁の挙上
乳腺が切除された後、その部分を下腹部の皮膚と脂肪で再建します。組織移植は血管(動脈・静脈)をつけて挙上します(遊離腹部皮弁移植といいます)。腹部皮弁の血管は鼠径部から臍周辺に向かって、腹直筋のなかを走行します。
皮弁挙上時に、血管だけにすると皮弁の血流が不安定になることがあるので、一部腹直筋も付着したまま血管だけにせず組織移植を行います。

③ 血管吻合
皮弁の血管を切り離したら胸の方に置き、皮弁の血管と移植床血管(内胸動静脈の予定)とを顕微鏡下に吻合し、血液を流します。血管の太さは2mm前後です。

④ 皮弁の固定
皮弁の血流が安定したら、乳房にいれる皮弁の形を決めて傷を閉じます。
胸のポケットに血溜まりができないようにドレーン(血液や浸出液を排出する管)を2本ほど留置して皮膚を縫合し、閉じます。乳輪乳頭部や切除した皮膚の部分は、腹部皮弁の皮膚を当てはめます。これは、術後の皮弁血流を確認するためのモニターになります。

⑤ 腹部の閉創
腹部皮弁を採取した所には2本程度ドレーンを入れて、筋膜や皮膚を縫合し創の閉鎖を行います。胸部操作で摘出した肋軟骨を下腹部に入れておき(バンキング)、後日、乳輪乳頭再建を行う際に使用することがあります。肋軟骨が保存に適さない状況になっている場合はバンキングしません。

乳癌に対する一次一期乳房再建(遊離腹部皮弁での再建)手術方法

(図:長崎大学病院 形成外科)

手術中、皮弁を栄養する血管が細く使用できない、もしくは挙上時や吻合時に血管トラブルが生じてしまった場合は皮弁での再建を中断・中止することがあります。その場合は、後日別の再建方法を検討します。また、術後に吻合血管に血栓が形成された場合や、創部に血腫などが貯留した場合は緊急手術を行う場合があります。緊急手術を施行したとしても血栓により皮弁が壊死(部分的もしくは全部)した場合は改めて別の方法で乳房再建を行うことを検討いたします。
術後は吻合血管トラブル防止のため安静が必要です。
柔らかい乳房形態を維持するために、うつ伏せ寝や締め付けの強いブラジャーの装着は控えてもらう必要があります。

病名・病態:
<対象疾患>

・毛細血管奇形(単純性血管腫)
生まれつきある赤い平坦な「あざ」です。毛細血管の異常なので、厳密には血管腫ではなく奇形に分類されます。毛細血管は動脈と静脈の間にあり皮膚に広がる細くて薄い管ですが、それらが異常に増えて集まった状態です。

・乳児血管腫(イチゴ状血管腫)
日本人では新生児のおよそ1%弱に出現すると言われています。
典型的には出生直後にはみられず生後数日~数週間で赤い斑点ができ、数か月で拡大・隆起し、多くはイチゴのような形状となります。隆起せず平坦な場合や、皮下に出来る場合もあります。1歳頃にピークに達し、その後は約7割の方で小学校低学年くらいまでの間にゆっくり色・隆起が引いていきます。

・毛細血管拡張症
炎症を伴わない持続性の毛細血管の拡張で、治療のターゲットは血管です。
原因は血中酸素不足、ホルモン、感染、手術侵襲、過度の紫外線被曝、ステロイドの影響、放射線治療後遺症など様々です。

解 説:
<目的>

レーザー照射により皮膚直下の赤あざの原因となっている血管を閉塞させ、あざの軽減を目指します。

<有用性>

血管の太さや深さで治療効果には個人差があります。
1回の照射で薄くなる方、数回照射して効果が出始める方、照射しても効果が得られない方と様々です。照射を繰り返しても完全には消失せず部分的に残存することが多いです。

・毛細血管奇形(単純性血管腫)
頸部や顔面は5~10回程度の治療で多くの場合改善を見ますが、下肢は時に難治性で改善しない場合もあります。それでもレーザーによって、無治療よりはその後の変化をかなり軽微に止められると考えられており、1年に1回ほどの経過観察を行いながら、少しずつでも治療を続けることをお薦めしています。

・乳児血管腫(イチゴ状血管腫)
以前は自然消退するため治療の必要が無いと言われていましたが、隆起によって萎縮瘢痕や変形を残すことがありレーザー治療対象となります。
レーザー治療により増殖のピークを抑え、退縮を早めると言われています。

色素レーザー照射法:苺状血管腫のレーザー治療の経過

引用:CANDELAパンフレット「よくわかるVビーム治療」

・毛細血管拡張症
赤みが目立つ場合、整容面改善のために照射を行います。

手術方法:

・当院ではキャンデラ社の皮膚冷却装置付き長パルス幅色素レーザー(VビームⅡ®:595nm)を使用しています。

・レーザー治療は単一の波長の光を照射する方法です。色素レーザーの光は皮膚を通り抜けて、皮膚直下にある血管内の赤血球(ヘモグロビン)に選択的に吸収され、熱変性により血管を閉塞します。

・照射する皮膚の厚さや血管の深さ・太さによって、レーザーの照射時間や出力、波長を調節しながら治療を進めます。初回は試験照射といって小範囲に照射することもあります。

<治療の流れ>
・通常は1回の照射ではなく1~3か月おきを目安に複数回の照射が必要になることが多いです。

・日焼けで皮膚が黒い状態では、レーザー光がメラニンに吸収され治療効果が望めないことがあります。その場合は治療を行わないことがあります。

① 外来照射の場合
・照射時の痛みに対して、必要に応じて麻酔テープ(リドカインテープ)を使用します。貼付後30分~1時間待機してから照射になります。

・小さなお子さんは安全に照射するため体を押さえさせていただきます。

・病変が広範囲の場合は1回の外来で全てに照射するのではなく部分照射にすることがあります。

・照射後は炎症を抑えるためにステロイド軟膏を塗布し、10分程保冷剤で冷却してからご帰宅いただきます。

② 全身麻酔下照射の場合
・体を押さえても動きが抑えられない場合や、病変が広範囲に及ぶ場合、眼瞼の病変の場合は1歳以降を目安に全身麻酔下で照射を行うことがあります。

・照射前日に入院し当日朝から照射、術後の覚醒具合や体調に問題なければ当日午後に退院となります。

<照射後のケア>
・治療当日は照射部位に化粧はしないでください。

・当日の入浴は可能です。

・照射後半年は遮光(日焼け止めクリームや衣類など)、保湿を徹底してください。乾燥しているとレーザーの刺激により創が出来やすくなります。

・ステロイドの軟膏を処方しますので、当日夜入浴後に1回塗布してください。翌日照射部に水疱やびらんがある場合は治るまで塗布+保護を続け、1週間たっても治らない、もしくは創の様子がおかしい場合(ひどい、出血する、熱を持つなど)は外来に連絡し受診してください。
翌日、創がなければステロイド軟膏は終了し保湿を毎日行ってください。

<照射後経過>
数日~数週間かけて徐々に薄くなります。その過程で一時的に色調が濃くなったり紫斑を形成したりすることがあります。

・紫斑
照射部位が紫斑といって赤紫色に変色することがあります。これは治療過程で自然な反応で、1~3週間で消失することが多いです。この時期は特に色素沈着を来しやすいため日焼け予防を徹底してください。

・再発
毛細血管奇形ではレーザー終了後数年すると再び濃くなることが報告されています。その場合は年に1回程維持療法として照射を行います。

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