~多職種間の連携を基にした集中治療部~
長崎大学病院集中治療部(ICU)は、ICU-A(8 床:Closed ICU)とICU-B(12床:Open ICU)の計20床で重症患者の診療にあたっています。原教授の指導の下、集中治療専従医9名 のほか各専門診療科医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、医療事務員など多くの専門スタッフが従事しています。
<集中治療部医師> | <集中治療部看護師; 師長、主任> | <感染制御教育センター医師> | ||
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<集中治療部担当薬剤師> | <集中治療部担当理学療法士> | <集中治療部担当臨床工学技士> | ||
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<集中治療部担当メディカルクラーク> | ||||
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毎朝のカンファレンスでは、集中治療医が中心となり各専門スタッフからの意見を集約し治療方針を協議します。集中治療の現場では、重症疾患に対する診療は当然のことながら、複雑な薬物動態の把握や精密医療機器の操作、さらに超急性期におけるリハビリテーションといった専門性が要求される場面が多くあります。多職種間でface to faceの良好な関係が築けていることは、私達のICUの強みであると考えています。 | ![]() |
私達のICUは、内科系、外科系を問わず臓器障害を呈した成人重症患者を対象としたgeneral ICUです。また重症患者の複雑化する病態に対しては、各専門診療科医師と協力して治療方針を検討し、柔軟な対応をとれるように心掛けています。 臓器移植や人工心臓埋め込み手術といった外科系最先端医療に加え、敗血症や重症呼吸不全を始めとした内科系重症疾患への対応など、役割が増加しつつある長崎大学病院において、私達はこれからも今まで同様に、急性期医療を安全に支える存在でありたいと考えています。 |
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~モットーはRapid responseです~
私たち集中治療専従医8名は主にICU-A (closed ICU)を担当しています。外科症例では心臓血管外科術後患者を中心に診療にあたっていますが、肝臓移植手術や肺移植手術は当院の外科治療の特色の一つでありICUでの術後管理を担っています。また敗血症性ショックを合併した汎発性腹膜炎症例など高度な侵襲にさらされた手術患者の術後管理にも精通しています。このような敗血症患者においては早期の外科的な感染源コントロールに加えてシームレスに集中治療を行っていくことが重要です。そのような症例においては術前から積極的に治療に関わっていくことも少なくありません。
感染症診療に関しては、感染源より適切な時期に検体を採取し起炎菌を早期に同定し、迅速かつ適切に抗菌薬を投与するよう努力しています。そのためにICU内でグラム染色を行う体制を整え、その所見を抗菌薬の選択に活かすようにしています。普段主には手術患者の麻酔管理を担当している当科 (長崎大学 麻酔集中治療医学) の若手医師達にも、このような感染症治療の最前線に参加して活躍してもらっています。若手医師達は、手術室だけではなく集中治療の現場でも経験を積み教育を受けることが出来ます。また学んだことを周術期(術前、術中、術後)管理にフィードバックすることによって優れた麻酔科医に成長することが出来ます。難治性の重症感染症患者の診療では、感染制御教育センターの感染症専門医の協力のもと日々ディスカッションを行い治療の適正化に努めています。また、低体温療法、敗血症性ショック、重症急性膵炎、劇症肝炎、重症肺高血圧症などの管理に関しては、欧米や国内のガイドライン・文献などを参考に独自のマニュアルを作成し、最新で世界標準的な集中治療を目標としています。今日、さまざまな専門領域を擁する診療科が多数存在していますが、ICU-A では診療科の枠を超えて、重症患者に対する診療をおこなっています。
近年、依頼が増加している内科系診療科からの重症呼吸不全、循環不全、そして多臓器不全症例においても同様のスタンスで診療にあたっています。患者入室要請があればすぐに現場に急行し、ベットサイドでの情報収集と全身状態の評価をするRapid responseをモットーとしています。必要であればICU入室前より現場で積極的介入を行い集中治療に繋げていきます。症例によっては一時的なVA-ECMOもしくはVV-ECMOのサポートが必要な場合もあり、それぞれの職種が専門性を発揮し治療に従事しています。集中治療の内容は、多岐にわたりますがそれぞれの病態に合わせた治療を行い予後の改善を目指しています。 | ![]() |
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~多職種連携カンファレンス~
集中治療には多くの職種が関わっており、多様な専門性が一人の患者の治療に注がれています。治療の質を高めていくためには、患者治療に関わるすべてのスタッフがお互いの考え方を理解する必要があります。日々の臨床業務でも治療に関わるスタッフ間で治療内容に関するコミュニケーションは十分とるようにしていますが、多職種間でそれぞれの考え方を共有する場として定期的なカンファレンスを開催し、知識や経験のブラッシュアップに努めています。
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~医師として第一歩を踏み出された研修医の皆さんへ~
重症患者の全身管理は困難な出来事の連続です。それを乗り越えるべく、私たち集中治療部スタッフは24時間体制で重症患者の救命および早期回復に尽力しています。集中治療には重症患者を支える大きな力とロジックがあります。その力、ロジックを是非体験しに来てください。私たち長崎大学病院集中治療部のスタッフは若い力に大いに期待し、歓迎しています。
~スタッフ紹介~
集中治療部医師スタッフ | ||
名 前 | 役 職 | 資 格 |
原 哲也 | 部長 (麻酔科教授) |
麻酔科指導医、麻酔科専門医、麻酔科標榜医、臨床研修指導医 |
関野 元裕 | 副部長 (准教授) |
集中治療専門医、麻酔科指導医、麻酔科専門医、麻酔科標榜医、 呼吸療法専門医、抗菌化学療法認定医、 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医 |
一ノ宮大雅 | 講 師 | 集中治療専門医、麻酔科指導医、麻酔科専門医、麻酔科標榜医、 心臓血管麻酔専門医、日本周術期経食道心エコー認定医、 臨床研修指導医 |
矢野倫太郎 | 助 教 | 集中治療専門医、麻酔科指導医、麻酔科専門医、麻酔科標榜医、 臨床研修指導医 |
荒木 寛 | 助 教 | 集中治療専門医、麻酔科専門医、麻酔科標榜医、 日本周術期経食道心エコー認定医、臨床研修指導医 |
岩崎 直也 | 助 手 | 集中治療専門医、麻酔科専門医、麻酔科標榜医、 呼吸療法専門医、臨床研修指導医 |
河西 佑介 | 助 手 | 麻酔科専門医、麻酔科標榜医、臨床研修指導医 |
金子 翔平 | 助 手 | 麻酔科専門医、麻酔科標榜医、心臓血管麻酔専門医、 日本周術期経食道心エコー認定医、臨床研修指導医 |
横山 明弘 | 助 手 | 集中治療専門医、麻酔科専門医、麻酔科標榜医、心臓血管麻酔専門医、 日本周術期経食道心エコー認定医、臨床研修指導医 |
新谷 亮祐 | 助 手 | 麻酔科専門医、麻酔科標榜医、日本周術期経食道心エコー認定医、 日本区域麻酔検定試験認定医 |
~施設認定~
- 日本集中治療医学会集中治療専門医研修施設
- 日本呼吸療法医学会呼吸療法専門医研修施設
~研究・学術活動~
臨床研究では、関野の重症患者の小腸粘膜障害と予後に関する前向き観察研究をはじめ様々な研究を行なっています。また、国内(日本集中治療医学会、日本集中治療教育研究会など)、海外の多施設共同研究、治験などにも積極的に参加しています。また、敗血症、ARDSなどのガイドライン作成にも積極的に参加しています。
現在進行中の研究および科学研究費取得状況、これまで作成に携わったガイドライン、業績を掲載します。
【当施設での臨床研究】
研究代表者 | 研究期間 | 研究テーマ |
関野 | 平成24年~ | 重症患者における消化管障害と予後に関する研究 |
荒木 | 令和6年〜 | 人工呼吸器離脱後の患者におけるHigh Flow Nasal Cannulaの効果と忍容性について |
岩崎 | 令和6年〜 | ICUにおけるアルコール含有擦式消毒剤の手指消毒使用量と新規MRSA検出数の関連 |
金子 | 令和5年〜 | 脊椎麻酔下人工股関節全置換術を受けた患者におけるデクスメデトミジン関連術後低血圧の予測因子に関する単施設後方視的研究 |
牧野 金子 |
令和6年〜 | 電位感知型筋弛緩モニタリング時の刺激電極貼付位置に関するランダム化二重盲検比較試験 -両上肢回内0度位での腹腔鏡手術における検討- |
谷村 金子 |
令和6年〜 | 脊髄くも膜下麻酔時の冷罨法による局所麻酔穿刺痛緩和効果の検討 |
新谷 | 令和6年〜 | 全身麻酔下外科手術患者におけるpulse-amplitude indexとcapillary refill indexの相関の検討 |
【国際多施設共同研究への参加】
研究代表者 | 研究期間 | 研究テーマ |
関野 | 令和6年〜 | 低IgG血症を呈する敗血症に対する免疫グロブリン療法 ―多施設共同ランダム化比較試験― |
横山 | 令和5年〜 | 術中アナフィラキシーショックに対するアドレナリン静脈内投与による循環動態並びに関連する患者因子に関する検討 |
【動物実験】
研究代表者 | 研究期間 | 研究テーマ |
岩崎 | 令和3年〜 | 肥大心のメタボローム解析と薬理学的コンディショニングにおけるNAD+合成系の制御 |
河西 | 令和3年〜 |
薬理学的循環補助におけるβ2受容体の役割 |
横山 | 令和5年〜 |
SGLT阻害薬が心筋虚血再灌流障害時の内在性臓器保護効果に与える影響と機序解明 |
【科学研究費取得状況】
研究代表者 | 研究種目 | 研究期間 | 研究テーマ |
関野 | 基盤研究C | 2024-2027年度 | 敗血症性ショックにおける末梢循環を指標とした 新規治療戦略の確立 |
一ノ宮 | 基盤研究C | 2023-2025年度 | SGLT阻害薬が心筋虚血再灌流障害時の内在性臓器保護効果に与える影響と機序解明 |
岩崎 | 基盤研究C | 2023-2025年度 | 肥大心のメタボローム解析と薬理学的コンディショニングにおけるNAD+合成系の制御 |
【これまで作成に携わったガイドライン】
- 日本版敗血症診療ガイドライン2020 (関野)
- 日本版敗血症診療ガイドライン2024 (関野・岩崎)
- ARDS診療ガイドライン2016 (関野)
- ARDS診療ガイドライン2020 (東島)
【業績】
2018年以前は長崎大学医学部業績集(医学科→2.研究業績→5.病院:集中治療部)をご参照ください。