冠動脈狭窄がないのに狭心症? INOCA(イノカ)とは

冠動脈狭窄がないのに狭心症? INOCA(イノカ)とは
INOCA(イノカ)とは
 INOCA(Ischemic Non obstructive Coronary Artery disease、虚血性非閉塞性冠疾患)の略で、心臓カテーテル検査や心臓CTで目視できる冠動脈(心臓を栄養する血管)に閉塞や狭窄がない狭心症のことです。
 INOCAの患者さんは、普段から胸部圧迫感や息切れなどの症状に悩まされているにも関わらず、検査をしても冠動脈に狭窄が見つからないため、正常と診断されてしまうことがあります。
 しかし、従来法の冠動脈造影検査が正常であっても、本当は心臓が血流障害のために悲鳴をあげている可能性があるのです。

(IABP 文献2より引用)
(いらすとやフリー素材
 https://www.irasutoya.com/2014/06/blog-post_2801.html
INOCAを診断する意義
 INOCAの患者さんは、そうでない正常心臓の患者さんに比べて予後が不良であると報告されています。INOCAを適切に診断し治療介入を行うことで、患者さんの症状を改善し、また将来的な心臓死や入院を防ぐことができます。
 日本循環器学会のガイドラインにおいても、2023年にINOCAに関する内容が初めて記載されました。INOCAは循環器内科の領域において今まさに注目の疾患と言えます。
INOCAの原因
INOCAの原因は以下に大別されます。

当院におけるIMPELLA疾患内訳
(狭心症の原因 Abbott社 HPより引用)

 
冠攣縮性狭心症:冠動脈が一過性に痙攣を起こすことで狭窄や閉塞をきたします。
微小血管狭心症:もともと心臓には目に見える心外膜血管の他に、微小冠動脈が多数存在することが知られています。この目には見えない血管の血流障害(冠微小循環障害)によって狭心症をきたす病気です。

(Abbott社 HPより引用) (Abbott社 HPより引用)
(Abbott社 HPより引用)
 冠動脈造影では心外膜血管の観察が主であり、微小血管は見えません。
INOCAの診断方法
 冠微小血管狭心症の診断には、通常の心臓カテーテル検査の中で、専用のカテーテル機材と解析ソフトを用いて微小血管の血流や抵抗値を測定します。冠攣縮誘発が必要な患者さんには薬剤負荷によって血管の痙攣を誘発するテストも行います。患者さんの背景や症状に応じて検査の内容は変わります。検査時間は約60分です。

(CoroFlow™解析画面 Abbott社 HPより引用)
(CoroFlow™解析画面 Abbott社 HPより引用)

解析画面の一例。一度のカテーテル検査で心臓に関するさまざまな情報を得ることができます。
INOCAの治療
 冠攣縮を予防・解除するためには冠血管拡張薬が有効です。冠微小循環障害にはさまざまな薬剤の有効性が報告されていますが、まだエビデンスとして確立されたものはないため、患者さんごとに個別に治療を選んでいきます。生活習慣の改善や動脈硬化の古典的な危険因子(喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満)の管理が重要とも言われています。

(INOCAの治療 Abbott社 HPより引用)
(INOCAの治療 Abbott社 HPより引用)
さいごに
 当院では2023年より冠微小循環障害を診断できる検査装置(CoroFlow™)を導入しました。INOCAの正確な診断を行うことで、狭心症にお困りの患者さんのお力になれれば幸いです。まずはかかりつけの先生に診察していただき、検査が必要であれば当科外来までご相談ください。
当科窓口
虚血性心疾患 外来(担当医:赤司良平、本田智大)