医局紹介
長崎大学医学部精神神経科学教室は1907年に開設された歴史ある教室です。長年WHOの研究協力機関として、世界規模の疫学研究にも参加してきました。現在まで多くの優れた精神科臨床医、医学研究者、行政医師を輩出し、国内外で活躍しております。大学病院では珍しく措置入院を受け入れていて、大学病院内で相当数の症例を経験できます。またカンファランスの時間を十分に確保し、症例検討を行っております。2023年4月に着任した熊﨑博一教授以下10数名の医師が、日々臨床に向き合いながら教育、研究業務も活発に行っております。新型コロナウイルス感染症の拡大は教育、コミュニケーションの在り方を変えました。Chat-GPTを始めたAIの台頭、働き方改革の導入など社会、精神科診療を囲む状況は目まぐるしく変化しております。今後も社会の変化が精神科を取り囲む状況を劇的に変えていくでしょう。私たちはそういった変化にもいち早く適応し、精神科医療の発展に貢献してまいります。新しい時代の精神科を時代に先駆けて模索してまいります。
当教室の魅力
臨床
・最短での精神科専門医、精神保健指定医取得を目標にしています。
・大学病院では珍しい、措置入院対応が可能です。
・児童精神科も充実しており豊富な症例が経験出来ます。
・精神保健指定医、専門医は当然のこと、子どものこころ専門医取得も可能です。
・大学病院では珍しい児童精神科の独立講座を保有しています。
・指導医がマンツーマンでの指導体制をとっています。
・mECT, rTMSも積極的に実施しています。
・リエゾン、緩和ケアにも注力しています。
・脳神経内科、小児科をはじめ他科との連携も良好で、自殺対策にも注力しています。
・離島、地域医療医療への次世代の遠隔診療、人工知能、ロボット導入を積極的に試行しています。
教育
・週に複数回のカンファレンスで症例を検討します。
・毎週のクルズス、定期的な抄読会の他、全国各地から講師を招聘しての研究会、講演会を月1回以上の高頻度で開催しています。
・肥前精神医療センターと合同で児童思春期症例の症例検討会を定期的に開催します。
・県内基幹病院(長崎県精神医療センター、道の尾病院、田川療養所、三和中央病院はじめ各病院)、肥前精神医療センター、慶應義塾大学病院はじめ学外組織とも綿密に連携しています。
・認知行動療法はじめ精神療法の取得も全力で支援していきます。
研究
・ムーンショット型開発研究事業、JST CREST、未来社会創造などを受託し、AI・ロボット研究、児童精神科研究、依存症研究、社会精神医学研究はじめ個々の関心にこたえる体制を構築しています。
・大学院進学も柔軟に対応します。
・ヴァンダービルト大学、南カリフォルニア大学、ロレーヌ大学はじめ豊富な国際連携を行っています。
精神科専門研修プログラム
専門研修プログラム名 | 長崎大学病院連携施設 精神科 |
基幹施設名 | 長崎大学病院 |
プログラム統括責任者 | 熊崎 博一 |
専門研修プログラムの概要 | 長崎大学医学部は150年以上の歴史を持ち、西洋医学伝来の地に立ち、古くから諸外国との交流を通して国際的に貢献する医療を展開してきた伝統がある。WHOの研究協力機関としてICD-10の編纂にも寄与した実績を持ち、広く国際的な視野を持った医療を展開している。一方で、長崎県は複雑な地形を有し、多くの離島を抱える地域でもあり、長崎大学をはじめとする多くの医療機関で連携・協働し地域医療を支えてきた。長崎大学の責務として国際医療と地域医療を担う教育のみならず、研究を通じて医学の発展に貢献できる医師を育成する。 |
専門研修はどのようにおこなわれるのか | 本プログラムは、3つの公的総合病院・1つの公的精神科病院・2つの私立精神科病院という、それぞれ特徴の異なる6つの病院で構成されている。時代とともに多岐に広がっていく精神医学へのニーズに応え、長崎県の精神医療に大きく貢献できる精神科専門医の育成を目指している。 |
基幹施設である長崎大学病院は、地域連携児童思春期精神医学診療部や認知症疾患医療センターを有しており、専門外来として機能している。また入院治療では、修正型電気けいれん療法や経頭蓋磁気刺激療法、クロザピン治療などを行っている。精神科医としての基本的な知識と技術を習得しながら、このような専門性の高い診療も経験し学ぶことができる。将来選択するサブスペシャリティを意識して、プログラムの中で特定の専門領域を重点的に学ぶことも可能である。 | |
長崎医療センターは、長崎県の中央部・東部・北部を含んだ広範な地域から、三次救急病院として数多くの患者を受け入れている。このため、身体合併症を持った患者や、自殺企図の患者が多く搬送される。急性期の診療を数多く経験し、他科との密な連携を通して、コンサルテーション・リエゾン精神医学について深く学ぶことができる。 | |
長崎県五島中央病院は、五島列島の中で唯一精神科病床を有し、文字通り地域を支える中核病院である。全国平均の10年先を行くと言われる五島市の高齢化率の中で、認知症に対する診療はひときわニーズの高いものであり、保健所をはじめとした地域の関係機関と連携して力を入れている。また、不登校に関する相談など児童思春期関連の診療も行っており、幅広い症例を経験できる。 | |
長崎県精神医療センターは、精神科救急センターに指定されており、24時間365日の体制で全県からの精神科救急症例に対応している。また医療観察法病棟も有しており、触法行為をした精神障害者の社会復帰に携わっている。 | |
道ノ尾病院は785床を有する大規模精神科病院で、デイケア・特別養護老人ホーム・宿泊型自立訓練事業所・就労継続支援B型事業所など、多種多様なリハビリテーションを実践し地域に大きな貢献をしている。また、アルコール依存症治療プログラムも行っている。 | |
三和中央病院は長崎市南部地域に位置し、700床を有する大規模精神科病院で、病棟は重度認知症疾患、一般精神疾患(統合失調症、気分障害)、児童思春期疾患、嗜癖疾患、身体合併症疾患などに機能分化され、急性期からリハビリテーションまで患者の回復過程にそった治療をおこなっている。アルコール使用障害、ギャンブル障害などの嗜癖患者へは精神療法として内観療法をおこなっていることも特徴である。 | |
このようにバリエーション豊かな学習内容であり、かつ将来のサブスペシャリティを深く学ぶことのできる、バランスのとれたプログラムとなっている。 | |
専攻医の到達目標 | |
修得すべき知識・技能・態度など | ICD-10やDSM-5に準じた診断と、各種ガイドラインに沿った治療を実践する。精神科医として必須の心理検査や精神療法などの技能を習得する。常に真摯な態度で全人的な医療を目指す。 |
各種カンファレンスなどによる知識・技能の習得 | 毎週の外来カンファ、病棟カンファ以外に緩和ケアカンファ、救急医療カンファ、児童思春期ミーティング、認知症ミーティング、てんかんカンファ、GID判定委員会など、他科との共同カンファが頻繁にあり、各種学会参加も推奨している。 |
学問的姿勢 | 診療のみならず学術研究、論文作成、学会発表などを通じて、医学の発展に貢献できる医師を目指す。 |
医師に必要なコアコンピテンシー、倫理性、社会性 | 患者の人間性を尊重し、人を支援することを身につけるだけでなく、分からないことに対して生涯にわたって学ぶという姿勢が重要であり、社会的使命を全うする医師を育てる。 |
施設群による研修プログラムと地域医療についての考え方 | |
年次毎の研修計画 | 基幹病院の指導医と話し合いながら計画を立てる。 |
研修施設群と研修プログラム | 研修施設により経験可能な疾患、検査、治療が異なっており、基幹病院である大学病院を軸に連携施設で研修を受けることにより、幅広い知識と技術を身につけることができる。 |
地域医療について | 連携施設での研修自体が地域医療の実践となっており、プログラム上も必須となっているため、どういうローテーションを選択しても経験できる。 |
専門研修の評価 | 技能、知識、習熟度合などを指導医が総合的に判断する。 |
修了判定 | 技能、知識、習熟度合などを指導医が総合的に判断する。 |
専門研修管理委員会 | |
専門研修プログラム管理委員会の業務 | 各連携施設と連携し、専攻医がより良い研修を受けることができるように話し合う。 |
専攻医の就業環境 | 過重労働にならないように注意をするが、経験症例が過少にならないようにも注意している。 |
専門研修プログラムの改善 | 必要があれば適宜専門研修プログラムを改善する。 |
専攻医の採用と修了 | 統括責任者を含む指導医陣による面接で採用を決定する。修了は指導医陣が総合的に判断する。 |
研修の休止・中断、プログラム移動、プログラム外研修の条件 | 妊娠出産や海外留学などの理由で研修の休止・中断をすることができ、特別な事情があればプログラム移動も検討することができる。 |
研修に対するサイトビジット(訪問調査) | 専攻医と電話、メール、Zoomなどを利用して連絡を取るだけでなく、必要があれば直接会って相談に乗ることができる。時として連携施設に出向いて、研修風景を確認する。 |
Subspecialty領域との連続性 | 専門医研修時期からサブスペシャリティを意識した研修が可能で、専攻医の志向性に合わせた連携施設のローテーションを検討できる。 |
入局者からのひとこと
令和4年度入局者
●こどもたちの健やかな発達に興味があり、児童精神を志したく入局いたしました。 まずは精神科医の基本である精神保健指定医や精神科専門医を取るまでの道のりに不安がありましたが、病状の解釈、理解、治療方針、地域連携など様々な視点から上級医とディスカッションする機会が多く、安心して研修に取り組めております。 古典的な病態から最新論文の情報まで、日常的に様々な先生たちと議論し合い、一人一人の患者様に最適な医療を提供していきたいです。
●主体的に治療方針を考えることができる環境です。専攻医で助け合い、切磋琢磨して日々過ごしています。上級医は私たちの視点をよく理解してくださり、カンファレンスで丁寧に症例検討を行うため、安心感があります。
令和5年度入局者
●学生時代と研修医時代は必修以外は精神科をほとんど経験せずに精神科に入局しました。知識がほとんどない状態でやっていけるか不安でしたが、チーム制での診療体制や、クルズスでの精神科の基礎知識から最先端の知識まで勉強できる体制が整っており、問題なく働けています。
●精神科はなんとなく面白そう、という漠然とした理由で選びましたが、実際主治医として患者さんを担当したりリエゾンに携わったりする中で、精神症状の多彩さ、精神科の重要性に気づきやはり精神科を選んで良かったなと感じています。私は育ちや研修先は他県でしたがこのたび縁あって長崎大学病院に入局に至り、とても快適な職場環境で働けていますし、良いところは残し、変えるべきところは良い方向に変えていこうという熱意を感じています。県外からでも当科、当院にご興味のある方、大歓迎です!身近な目線で色々相談に乗れると思うのでまずは是非見学にいらしてください。
●精神科では患者さんの医学的な面だけでなく、社会的・心理的な面も重要になるため、考えることには事欠きません。知識も経験もまだまだですが、他の先生方や看護師さん、薬剤師さん、PSWさん、作業療法士さんや事務の方などいろんな人の力を借りながら、患者さんに向き合う日々です。有名な先生方を招いた勉強会なども頻回に開催され、医員の希望も聞いていただけるので、望めば望むだけ勉強になる環境だと思います。
平成27年度入局者
高校時代から関心があった化学や生物、社会科学や哲学を将来的に職業にできたら良いなと考えた末に、精神科医という職を希望しました。医学部で色々な科を経験したら自分の考えも変わるかと思いましたが、結局初志貫徹して精神科に入局しました。この選択は今も間違っていなかったと思います。
精神科の魅力はさまざまですが、精神という曖昧な現象を把握して整理し、治療につなげる過程はとても興味深いです。もちろん、困っていた患者さんや家族が元の生活に戻って行く姿を見るのは一人の医師としてやりがいを感じます。
長崎大学精神科は他の大学医学部の精神科に比べて重症例を幅広く受け入れています。身体管理が必要な摂食障害の患者さん、自殺企図で重傷を負ったうつ病患者さん、措置入院患者さんなど豊富な症例を経験できます。専門医や精神保健指定医の資格取得に必要な症例の大半を集めることができる大学病院というのはかなり貴重な医療機関だと思います。
関連病院にも恵まれています。私自身は五島中央病院で4年間地域の精神科医療に従事しました。
ぜひ一緒に働きましょう!見学や研修をお待ちしています。
入局希望者へ
随時募集しています。他科からの転向、他大学からの入局なども歓迎しています。
不定期に入局説明会も行っています。
入局希望やお問い合わせ、見学希望等ございましたら、随時mailまでお願いいたします。
見学時の旅費サポート制度があります。詳しくはこちらのページをご覧ください。