診療内容(診療グループ):乳腺・内分泌外科
乳腺・内分泌外科班の診療と研究内容
乳腺(乳癌、乳腺良性腫瘍)と甲状腺疾患(甲状腺癌、甲状腺良性腫瘍、バセドウ病)を主に担当しています。また、上記疾患について定期的に他科(放射線科、病理部、内分泌内科など)とのカンファランスを開き、治療方針の検討を行っております。
対象疾患
① 乳癌 |
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乳癌は女性の癌ではもっとも罹患率が高く、一生のうち約12人に一人は乳癌にかかるといわれております。しかし、早期発見および適切な治療により治癒することも期待できます。当科では年間約80例の乳癌の手術を行なっており、その半数が乳房温存術です。 【 診 断 】 マンモグラフィ、超音波、MRIなどの画像検査にて悪性病変が疑われる場合には、針細胞診、針生検(組織診)にて細胞や組織を採取して確定診断をいたします。乳癌の早期発見にも力をいれており、日本乳がん検診精度管理中央機構の認定医師も多数常勤しております。
【 手 術 】 クリニカルパスを使用することにより治療の一律化と早期退院を可能にします。 ア)乳房部分切除術 術中迅速病理および標本レントゲン撮影による切除断端の検索により、いわゆる取り残しのない手術を目指しています。さらに整容性も考慮した再建を行います。術後は局所再発率を低下させるために残った乳房に放射線を照射することを原則としております。 イ)乳房切除術 腫瘤が大きい場合(一般的に3cm 以上)や広範囲に広がった乳癌などには乳房切除術を行っております。 ウ)乳房再建術 乳房をすべて切除された患者さんには人工物(シリコンなど)やお腹・背中の筋肉を用いて乳房を再建する方法があります。形成外科と協力して行ないます。 エ)センチネルリンパ節生検 画像検査や腋窩リンパ節の細胞診にてリンパ節転移がみられない、乳癌の大きさが3㎝以下の場合に適応になります。センチネルリンパ節とはがんが転移する可能性の高いリンパ節のことです。組織学的にセンチネルリンパ節に転移を認めない症例では腋窩リンパ節郭清を省略することが推奨されております。当科ではラジオアイソトープ法と色素法を組み合わせてより正確にリンパ節を探し出します。これは乳癌の手術と同時に行います。
【 薬物療法 】 乳癌は手術のみでなく、化学療法やホルモン療法などの薬物療法も非常に重要です。当科では病理標本よりホルモンレセプターおよびHer2/neu 、Ki67 (増殖因子)などの詳細な検討を行い、有効性が期待できる化学療法およびホルモン療法を選択します。再発時も同様です。また進行した状態で乳癌が見つかった方でも手術の前に抗癌剤を投与することにより、腫瘤が小さくなること期待できます。腫瘤が小さくなった場合には乳房をすべて取らなくてもよい乳房温存療法が可能になる場合があります。 【 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群 】 近年注目されている遺伝性乳癌・卵巣癌症候群の方を確実に拾い上げるために、問診で家族歴などをお伺いすることで、必要な方にはカウンセリングをおこなっています。県内でカウンセリングや遺伝子検査を受けることができる数少ない施設の一つです。ハイリスクの方には、ご家族を含めた適切な検診など、今後の健康管理についても対応いたします。 その他、線維腺腫や葉状腫瘍などの良性疾患の診断や治療も行っております。 |
② 甲状腺腫瘍 |
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主に甲状腺癌を中心とした甲状腺腫瘍の手術を行なっております。甲状腺癌は本邦では約9割が乳頭癌というおとなしいタイプのがんです。乳頭癌は10年生存率も約9割です。通常は切除により長期の予後が期待できます。ただ頻度は少ないのですが未分化癌という予後の悪いがんも存在します。甲状腺腫瘍は悪性腫瘍の診断がつかない場合でも4cmを超える場合は悪性腫瘍の可能性が否定できず、更に増大することが予想されるために手術による切除が選択されることがあります。また体表から腫れているのが分かるため、見た目が気になる場合なども手術の適応です。その他、薬物療法が無効であったり、副作用のために薬物療法ができない甲状腺機能亢進症(バセドウ病)も手術の適応です。
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研究内容
基礎医学教室などの協力により、乳癌の遺伝子に関する研究も行っております。また、九州・全国の臨床試験にも積極的に参加しており協力していただける患者さんにはご協力をお願いしております。
● マイクロアレイによる乳癌発症原因遺伝子解析 ● センチネルリンパ節生検の新規迅速診断の開発 ● 3Dモデルの甲状腺腫瘍診断への活用 ● 甲状腺癌に対するセンチネルリンパ節生検の確立 ● p53-binding protein 1(53BP1)蛍光免疫染色を利用した甲状腺濾胞性腫瘍の術前診断 |