診療内容(診療グループ):呼吸器外科
1.胸腔鏡下手術
近年手術器具の進歩による内視鏡下手術が増加しており、胸部手術に関しても胸腔鏡下手術は増加しています。当科でも胸腔鏡手術症例(ロボット支援下手術を含む)は全体の約70-80%を占めるまでになっています。胸腔鏡下手術のメリットは、患者さんの整容性に優れ、体力の回復が早く、術後の痛みも少ない傾向にあります。
胸腔鏡下手術の適応は、チーム内で充分なカンファランスを行い、安全性と根治性を最も最優先事項とし、小型肺癌からリンパ節転移を有する肺癌、転移性肺癌、良性腫瘍、縦隔腫瘍などあらゆる疾患に対して行っています。
胸腔鏡下手術の適応は、チーム内で充分なカンファランスを行い、安全性と根治性を最も最優先事項とし、小型肺癌からリンパ節転移を有する肺癌、転移性肺癌、良性腫瘍、縦隔腫瘍などあらゆる疾患に対して行っています。
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2.肺区域切除術
肺区域切除は、腫瘍がある部分の「区域」を切除する手術法です。大規模な臨床試験の結果から胸部薄切CTで3 cm以下の早期肺がんに対して、これまで標準治療として行っていた肺葉切除に加えて切除範囲がより小さい区域切除が標準治療のひとつとして確立し、より肺機能温存に配慮した外科治療の提供が可能となりました。
肺区域切除では区域につながる肺血管と気管支のみを選んで切除し、さらに腫瘍位置を同定し適切な距離を確保して肺区域を切除する必要があるため、解剖の熟知や細かな手術操作を必要とし技術的には難易度が高くなります。長崎大学病院呼吸器外科では、区域切除においても術後合併症発生率は肺葉切除と同じように低い水準に抑えられています。
肺区域切除では区域につながる肺血管と気管支のみを選んで切除し、さらに腫瘍位置を同定し適切な距離を確保して肺区域を切除する必要があるため、解剖の熟知や細かな手術操作を必要とし技術的には難易度が高くなります。長崎大学病院呼吸器外科では、区域切除においても術後合併症発生率は肺葉切除と同じように低い水準に抑えられています。
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3.縦隔腫瘍
縦隔とは、左右の胸膜腔の間にある領域を指し、心臓や大血管、食道などの重要な臓器が存在します。ここにはさまざまな腫瘍が発生し、日本胸部外科学会の2020年の調査データでは縦隔腫瘍の中で最も多いのは胸腺腫(46%)、次いで先天性嚢胞(22%)、神経原性腫瘍(7%)、リンパ性腫瘍(3%)、甲状腺腫(1%)、肺細胞腫(1%)となっています。
胸腺腫: 胸骨の裏側に位置し、左右の葉から成る胸腺で発生する腫瘍です。胸腺は免疫機能に関連する器官で、思春期以降は退縮し、成人では脂肪に置き換わります。胸腺腫は良性ですが、周囲の臓器に浸潤する傾向があるため、治療では悪性腫瘍に準じた対応が必要です。
先天性嚢胞: 主に気管支原性嚢胞と心膜嚢胞に分けられます。気管支原性嚢胞は胎生期に気道と食道が分離する際に生じ、一般的には無症状ですが、感染すると発熱や胸痛が生じます。心膜嚢胞は心横隔膜角で多く見られ、右側に生じやすいですが、通常は無症状です。
神経原性腫瘍: 自律神経節や傍神経節の神経細胞由来、または末梢神経の神経線維由来で発生し、通常は増殖がゆっくりで症状は少ないです。しかし、腫瘍が大きくなると胸腔内の圧迫感や胸背部痛、上肢痛などが現れることがあります。腫瘍が脊椎管内に達すると、下肢対麻痺や神経圧迫症状が現れます。
リンパ性腫瘍:主に悪性リンパ腫で、リンパ節やリンパ組織由来の腫瘍です。急速に発育し、発熱や倦怠感、リンパ節腫脹が主な症状です。
甲状腺腫: 頸部の甲状腺が縦隔にまで発育したもので、一般的には無症状ですが、進行すると嗄声や嚥下障害が現れます。
胚細胞腫: 胚細胞由来の腫瘍で、腫瘍は良性と悪性に分けられ、良性では成熟奇形腫が代表的です。悪性では、未成熟奇形腫、卵黄嚢腫瘍、絨毛がんなどがあります。これらの腫瘍は若年層に多く、診断には画像検査や血液中の腫瘍マーカー測定が有用で、症状は、咳、胸痛、呼吸困難、発熱、疲労などが代表的です。
治療: 胚細胞腫と悪性リンパ腫には化学療法や放射線療法が主に行われますが、その他の腫瘍には外科的切除が用いられます。手術技術と機器の進歩により、従来の正中切開手術や胸腔鏡手術に加え、ロボット手術も積極的に導入されており、負担の少ない治療が可能です。腫瘍の大きさや位置に応じて最適なアプローチが取られ、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。
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4.ダビンチを用いた肺癌手術(ロボット支援下肺悪性腫瘍手術および縦隔腫瘍手術)のご案内
当科では肺癌に対して2019年2月より Intuitive Surgical社製の Da Vinci™(ダビンチ)によるロボット支援下肺手術を、2021年3月からは縦隔腫瘍に対しても開始しています。当初はI期肺癌や小型の縦隔腫瘍から開始しましたが、現在はリンパ節転移を有する症例や気管支形成を要する症例、術前治療後の症例など、ロボット支援下手術の利点を生かし、その適応を拡大しています。
現在当院では2台のDa Vinci Xi™を有しており、九州ではもとより、西日本でも多くの経験を積み重ねている施設となります。日本呼吸器外科学会認定の3名のプロクター(指導医)が在籍しておりますので、ロボット手術をご希望される方は、ぜひ当科へご相談下さい。
現在当院では2台のDa Vinci Xi™を有しており、九州ではもとより、西日本でも多くの経験を積み重ねている施設となります。日本呼吸器外科学会認定の3名のプロクター(指導医)が在籍しておりますので、ロボット手術をご希望される方は、ぜひ当科へご相談下さい。
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