診療内容(診療グループ):小児外科
小児外科班の診療と研究内容
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 小児外科では主に「癌(がん)」を扱う成人外科と異なり、生まれながらの奇形、機能異常の治療を中心に行っています。対象となる疾病が多くの臓器に及ぶため幅広い知識と、生理学的・解剖学的に未熟な小児を扱うために、より繊細な手技を必要とします。
 当科小児外科班は1970年から診療を開始し、2005年には長崎県で唯一の日本小児外科学会認定施設となり長崎県の小児外科診療を行う中心施設となっています。
 現在では長崎大学病院の小児外科を中心として、長崎医療センター・小児外科(大村市)、佐世保市総合医療センター・小児外科(佐世保市)に当科の専門医以上の医師を常勤または非常勤として派遣して外来診療・手術を行っています。
診療
当院の外来診療
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毎週曜日の午前9時から午後12時30分までを基本としています。

月・水・金曜日の午後は、下記のように特殊外来になっていますが通常診療も行っております。

(月曜日:トランジション外来、水曜日:気管切開・胃瘻外来、金曜日:トランジション外来)

新生児疾患救急疾患随時受け入れております。腫瘍外科医局または小児外来に直接ご連絡いただいても結構です。

胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、鎖肛、ヒルシュスプルング病、小児悪性腫瘍、新生児疾患などで治療を受け、成人期を迎えた方(トランジション)がその原疾患で医院や市中の総合病院を受診した場合、症状や病態を理解してもらえない場合があります。小児外科で治療を受けて成人となった方は年々増加しており当科では原則として成人式を迎える18歳まで外来診療を続け、本人に病気の説明と将来起こりうる危険性などを十分に説明し、必要に応じて診療情報提供書を作成しています。以前当科で治療を受けた方で病状に不安のある方はいつでもご相談ください。

手術治療
以下のように、様々な疾患、臓器を対象にしています。

  • 新生児疾患;生まれながらの消化管、肺、体表などの奇形
  •  先天性食道閉鎖症、先天性横隔膜(胸腹裂孔)ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患(肺分画症、先天性肺気道奇形、気管支閉鎖症など)、先天性腸閉鎖症、鎖肛、ヒルシュスプルング病、腹壁破裂、卵巣嚢腫など

  • 口腔・頸部疾患;腫瘤、生まれながらの瘻孔など
  •  耳前瘻孔、正中頚嚢胞、リンパ管奇形(リンパ管腫)、血管奇形(血管腫)など
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    頚部リンパ管腫・術前 頚部リンパ管腫・術後1年 頚部リンパ管腫・術後6年

  • 胸壁疾患;胸郭の陥没や突出などの変形、乳房の腫瘤など
  •  漏斗胸、鳩胸など
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    漏斗胸・術前 漏斗胸・術後

  • 呼吸器疾患;気管の狭窄、異物の気道内への吸い込み、検診などでの胸の異常な陰など
  •  先天性声門下腔狭窄症、先天性気管狭窄症、気管軟化症、異物誤嚥など

  • 消化器疾患;嘔吐、吐血、下血、高度便秘、腹部膨満、異物誤飲、腹痛、腹部腫瘤など
  •  胃食道逆流症・逆流性食道炎、食道静脈瘤、胃・十二指腸潰瘍、メッケル憩室、大腸ポリープ、消化管異物、ヒルシュスプルング病、急性虫垂炎など

  • 肝胆膵脾疾患;黄疸、胆管炎、膵炎など
  •  胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、胆嚢結石、脾腫など

  • 腹壁・鼠径部疾患;鼠径部の腫瘤、臍の突出、睾丸の欠損、包茎など
  •  鼠径ヘルニア・陰嚢水腫、臍ヘルニア、停留精巣・移動精巣、包茎など
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    臍ヘルニア・術前 臍ヘルニア・術後

  • 良性・悪性腫瘍;腹部腫瘤、腹部以外の腫瘤、血尿など
  •  神経芽腫、Wilms腫瘍、肝芽腫、横紋筋肉腫、奇形腫群腫瘍、リンパ管奇形、血管奇形など

  • 外傷;交通事故、転落、打撲、熱傷など
  •  気道損傷、肺損傷、腹部損傷など

  • 重症心身障害児;誤嚥、食物の摂取が出来ない、繰り返す肺炎など
  •  誤嚥性肺炎、胃食道逆流症・食道裂孔ヘルニア、摂食障害など

  • 内視鏡手術(胸腔鏡、腹腔鏡など)

 良性疾患が大半を占める小児外科領域では、術後のQOL (Quality of Life: 生活の質)や創の整容性を考慮した術式選択が求められます。当科では内視鏡手術を積極的に取り入れ、低侵襲手術を行っています。


また、このような症状がある場合はご相談ください
 小児科や内科・外科医院から紹介される患者様がほとんどですが、おなかのしこり、長引く便秘、下血、嘔吐などは小児外科特有の病気が潜んでいる危険性がありますので、長期間難渋している症例はいつでもご相談ください。他の病院で小児外科の治療・手術を受けた方、過去に小児外科で治療を受けられて最近調子が悪い場合など訴えられる症例がございましたらご相談下さい。セカンドオピニオンにも応じています。
研究
教育研究
 近年、少子化が進んでおり小児外科が携わる手術症例は減少傾向にあります。一例一例

胆道閉鎖症スクリーニング(胆道閉鎖症および胆汁うっ滞性肝疾患早期発見の試み
 新生児黄疸を主症状とする胆道閉鎖症は早期発見により、その予後が左右されます。当科では胆道閉鎖症に対する早期発見を目指してスクリーニングの基礎研究をおこなっています。2006年から長崎大学産婦人科教室の協力のもと全県で胆道閉鎖症および胆汁うっ滞性肝疾患早期発見のスクリーニングを開始しました。

カテーテル関連血流感染症
 ヒルシュスプルング病類縁疾患や短腸症候群のため、長期型中心静脈栄養カテーテル(ブロビアックカテーテルや中心静脈ポート)を留置している方は、カテーテル関連血流感染症(カテ感染)を発症する可能性があります。当班では、カテ感染予防とカテ感染治療のためのエタノールロック療法を行っていますが、100%の治療法ではありません。現在は、カテ感染の基礎研究を行っており、カテ感染の予防・治療法の確立を試みています。