ブラック・ジャック セミナー (キッズ外科セミナー)
このセミナーは子どもたちの夢をかなえる一日です。
外科医という仕事を経験してもらい、より身近に感じて自分たちの将来につなげてもらいたいと思っています。
カザフスタンでの肝移植医療の発展にむけて
カザフスタン共和国の地理

カザフスタン共和国の地理
 カザフスタンはロシア、中国という大国の間で中央アジアに位置し、日本からは韓国・ソウルを経由し、ソウルからは直行便6時間のフライトで旧首都アルマティへ到着します。日本との時差は3時間です。
長崎大学との交流の歴史

 カザフスタンは旧ソ連時代に核実験が行われたセミパラチンスク核実験場がある国であり、長崎大学は以前より被ばく医療の分野で、同国と協力・交流してきました。
 2012年3月カザフスタンより長崎医療センターを通じて、長崎大学病院を訪れ、生体肝移植を見学したNariman Sadykov医師による推薦にて、4月24-28日にカザフスタン・アルマティにて開催されたシンポジウムに、移植・消化器外科 江口晋教授が招待され、講演を行われました。その際、江口教授はアルマティのシズガノフ国立外科科学センターも訪れ、同センターと移植医療分野での相互連携に関する話が進み、その後、長崎大学とシズガノフ国立外科科学センターとの間に学術交流協定が結ばれました。
シズガノフ国立外科科学センターでの生体間肝移植成功

シズガノフ国立外科科学センターでの生体間肝移植成功
 カザフスタンでは1996年に第一例目の脳死肝移植が施行されるも、残念ながら良い結果が得られず、その後2011年にベラルーシのチームが参加し、第一例目の生体肝移植が行われるまで肝移植プログラムは事実上ストップしていました。

 長崎大学チームは、2012年の7月から2013年2月までの間に4回のカザフスタン訪問にて計6件(初回2件、2回目1件、3回目2件、4回目1件)の生体肝移植に携わり、麻酔科から趙 成三講師、当科からは江口教授、黒木准教授、高槻講師、曽山助教、大学院生の木下らが参加しました。

シズガノフ国立外科科学センターでの生体間肝移植成功
第1例目、第2例目の患者さんと
第1例目、第2例目の患者さんと
 7月の初回訪問時は、2件の生体肝移植が行われました。第1例目はレシピエント 江口、曽山、ドナー 高槻、木下というメンバーで手術開始し、カザフスタンの外科メンバーがアシストするという形でした。外科医、麻酔科医、看護師、ほぼ初顔合わせではありましたが、カザフスタンの人々の温かい人柄もあり、打ち解けるまでは時間はかかりませんでした。手術器械をカザフ語で要求しながら、手術は順調に進み、第一例目を無事に終えることができました。

 このプロジェクトの目的は、生体肝移植という医療が、カザフスタンで安定した医療として定着する事にありますので、それには、カザフスタンの肝移植チームが、手術、周術期管理というものに習熟していく必要があります。第二例目では、カザフスタンの外科医が、レシピエント、ドナーの執刀をし、長崎大学チームがサポートをするという形をとり、こちらも無事に手術を終えました。
「カザフスタン共和国保健分野功労賞」日本人初受賞

 長崎大学チームが参加しての生体肝移植の成功は、現地で大きく報道され、新聞、TV、インターネットで取り上げられました。 江口教授は、カザフスタンでの生体肝移植手術の実績が評価され、同国の保健相から医療や保健分野で貢献した人に贈られる「カザフスタン共和国保健分野功労賞」を日本人で初めて受賞され、他のスタッフも感謝状を頂きました。
 このニュースが伝わるや、シズガノフ外科センターには、手術成功の祝福の電話がなるとともに、全国で肝疾患に苦しむ患者さんから問い合わせの電話が何件もかかって来たとのことです。

これから


 手術室やICUの環境、また手術器械など、やはり日本とカザフスタンで異なるところは多々あります。現地の器械やシステムで対応できるところは対応していますが、なかなかそれだけでは難しいところは、その必要性を丁寧に説明しながら、整備を進めてもらっています。


カザフスタン外科チームとのWeb会議
カザフスタン外科チームとのWeb会議

 長崎チーム帰国後、術後管理については、基本的にはEメールでやり取りしていますが、やはり細かいコツなど、直接discussionしたほうが良いと判断される場合もあり、インターネットビデオ通話(SkypeTM)を用いたいわゆるWeb会議を行いました。これにはちょっとしたサプライズがあり、パソコンの画面にカザフスタンの外科チームのみではなく、移植を受けたレシピエント二名が元気な姿を我々に見せてくれました。

 2012年10月には、シズガノフ外科センター長であるArzykulov教授他、外科、麻酔科チームが長崎大学病院の見学に訪れました。10日ほどの滞在でしたが、期間中に当科以外との面談や見学も行い、長崎大学とシズガノフ外科センターの結びつきは今後一層強くなることが期待されます。

 今後も継続的に技術の伝達、システムの確立など多くの面での当科の協力が、カザフスタンにおける肝移植医療の発展、定着に結びつくことを心より望んでいます。