医学部長から新入生へのメッセージ
長崎大学医学部医学科の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんのご入学を心よりお慶び申し上げます。皆さんが医学科の一員として、長崎大学の仲間に加わっていただけることを、教職員そして在校生の皆が心待ちにしていました。我々と一緒に素晴らしい学生生活を過ごしましょう。
皆さんはこれからの6年間で、医師として必要な知識を幅広く学ぶことになります。加えて、他の個人や社会と関わるためのヒトとしての在り方や、異なる領域の専門家たちと協力して働くための心構えなど、多くのことを学び身につけていかれるでしょう。その中で、心に留めていただきたいことが3つあります。それは、正しい理解、正しい態度、正しい姿勢です。言い換えると、論理、共感、倫理の3つです。
正しい理解とは、心あるいは理性の在り方です。論理的な考え方です。複雑な事柄を矛盾なく筋道立てて整理し、根拠に基づいて結論を導く考え方です。論理的に考えることで、信頼度の高い説得力のある結論が得られます。その方法として、目の前の事柄を一般的な原則に照らし合わせて結論を導く演繹法や、いくつかの事柄から共通点を見出して結論を導く帰納法などがあります。自分自身と相手の理解を高め、賛同してくれる仲間を増やすためにも論理的な思考を心がけてください。
正しい態度とは、感情の在り方です。医療においては共感する力です。単なる同情ではありません。共感とは、自分の立場を保ちながら、相手の感情や意見を自分のこととして理解し、相手の気持ちに寄り添うことです。共感により、相手との信頼関係を築き、意思の疎通を円滑に進めることができます。論理に共感を加えることで、より円滑なコミュニケーションが可能となります。相手の話を遮らずに最後まで聞いてください。相手の表情、言葉の調子、場の雰囲気から、言葉の裏にある相手の本音を推察してください。相手が患者であれば、共感力を高めることにより、患者の病気だけではなく、患者自身も治すことができるかもしれません。
正しい姿勢とは、身体の在り方あるいは行動の在り方です。社会における倫理的な行動です。責任ある行動です。法律を守ることは当然のことですが、倫理的行動とは、法律を超えて、社会や集団における明文化されていないルールを守ることです。そのためには、誠実さ、公平性、透明性が必要です。医療においては、患者の意思や尊厳を尊重すること、患者にとっての最善の利益を優先すること、患者に危害を加えず危険を予防すること、平等かつ公正に医療を提供することとされています。これら、論理、共感、倫理の3つを大切にしながら、実りのある学生生活を送ってください。
これから様々な場所で友人に巡り合う機会があるでしょう。我々、長崎大学の教職員も友人の候補に加えてください。困った時にはいつでも遠慮せずに声をかけてください。皆さんは我々の大切な後輩であり、未来の同僚でもあります。私自身も長崎大学医学科の卒業生として、皆さんの友人でありたいと願っています。
最後に、「ポンペの言葉」を贈ります。J. L. C. Pompe van Meerdervoort先生は長崎大学医学部開学の祖であります。「医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、人すなわち患者のものでなくてはならない。」この言葉は、医学や医療が患者のためのものであることを端的に言い表しているだけでなく、医師としての誇りを宣言したものでもあります。
これから新たな毎日が皆さんを待ち受けています。社会や医学・医療にイノベーションを起こすのは若い皆さんです。皆さんの力が新たな世界を切り開きます。長崎大学医学部医学科は皆さんが生み出す斬新で画期的な発想の実現を支援します。皆さんの学生生活が実り多いものとなることを願っています。ご入学まことにおめでとうございました。
令和8年4月2日
長崎大学医学部長
原 哲也